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スウェーデンで浸透している「叩かない子育て」は日本で実現できるか?

体罰禁止を30年前に導入。育児支援のモデルにもなっているスウェーデン

スウェーデンで浸透している「叩かない子育て」は日本で実現できるか?

スウェーデン大使館にお招き頂き、miku編集部が子育て支援が進んでいる国、スウェーデンへのプレスツアーに参加してきました。スウェーデンが取り組んできた子育てのスタイル、現地のママやパパの声を通して、叩かない子育てについて考えます。

福祉政策の下支えもあり 夫婦で育てるのが当たり前

子育てフォーラムなどが行われ、海外の事例が紹介されるときによく取りあげられるのが、スウェーデンの子育て支援。税金は高いけれど、それだけ福祉政策が充実しているというのが特徴です。
男性の育休取得を国を挙げて推進していることもあって、男性の育児家事分担率は、女性とほぼ同等だそうです。
 
育児サービスやサポートも充実。子どもが生まれると育児休暇を夫婦で交替に取り、子どもたちは1歳を過ぎたら、日中は保育園や保育ママたちと過ごします。女性の社会参画が進み、女性の就業率は世界でもトップクラス。夕方には仕事を終え、子どものお迎えをパパがすることも多く、子育ては夫婦で行うのが当たり前という印象です。

 

大人でも子どもでも尊重されるという考え方

スウェーデンで、体罰禁止の法律導入のきっかけになったのは、1970年代半ばに起こった、義理の父の虐待で子どもが殺された事件とのこと。この事件は多くの国民に衝撃を与えたそうです。
 
そもそも、「叩いたり、強く揺さぶったり、蹴ったり、棒などでぶったり……そんな行動を大人が大人相手にすると問題になるのに、“親だから大人だからと言う理由で、子どもに対して行える”という考え方はよくない」というのが根本。大人でも子どもでも、妻でも夫でも、雇い主でも雇われている人でも、それぞれが人として尊重されるべき。誰でも、虐げられたり辱められてはいけないという考え方も根底にあります。
 
この事件をきっかけに、メディアなどでも討論の機会が多く設けられるようになり、世論の後押しもあって、1979年、スウェーデンで世界に先駆けて体罰禁止の法律が生まれました。今では世界29カ国が子どもの体罰を禁止していて、この動きは世界的に広がりつつあります。

 

体罰肯定派の減少によって、体罰使用も減っています。

取材時は、クリスマス前だったので、窓辺にはきれいな飾りがかかっています。   きょうだい二人の子ども部屋。女の子のベッドにはぬいぐるみがありました。   子ども部屋の机には、お絵かきが置いてありました。

 

体罰を支持する親が減り 叩かれる子が激減

政府の体罰禁止の啓発キャンペーンもあり、1960年には50%以上の親が体罰を支持していましたが、現在では体罰支持は10%弱になったそう。叩かれている未就学児の割合も1960年には90%いましたが、現在では約10%になったそうです。これに伴い、子どもへの虐待も減少しています。
叩かれないで育った子どもたちは、学校などでも相手を叩いたりせず、相手を尊重するようになり、いじめも激減したそうです。
 
子育ての悩みについては、妊娠中と出産後に各10回程度の両親プログラムを実施しているそう。地域のママやパパ達が集まり、わが家のケースを相談し、情報交換を密に行うことで、子育ての問題に直面したときの工夫や方法をアドバイスし合える関係性になることも子育てにプラスになっているようでした。

叩く・体罰を与えるという選択肢が、子育てにない 

現地のママやパパにもお話しを伺いましたが、「子育ての中で、叩く・体罰を与えるなどの選択肢はない」というお話しでした。もちろん、叩く方法も使いながら子育てしている親全てが虐待につながるということではありません。しかし、叩いた手を止められなくなってしまう親がいたり、どこまでなら叩いていいのかと迷うなら、「叩くこと自体をやめよう」という考え方もあるのではと思います。
 
もちろん、叩かない=子どもの自由にさせるということではありません。現地で取材したママやパパも言っていましたが、「NO(いけない)」を毅然と伝えることは必要。
親が子どもに言うことを聞かせる手段として、叩くことや体罰をしないという考え方もあるのではないかと思いました。

取材・文/高祖常子

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