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災害から子どもを守る情報収集と親の心構え

情報に惑わされない!安心できる準備や対策を!

災害から子どもを守る情報収集と親の心構え

突然襲い来る自然災害の恐ろしさを体感した、東日本大震災。
子どもを守る親として、いざという時のために、どのような備えが必要なのでしょう。放射性物質についてなど、飛び交う情報の中で、何を信じ、どう対処していけばよいのか。子どもの心の問題や、メディアが子どもに与える影響などに詳しい小児科医の内海裕美先生に伺いました。

内海裕美先生
医学博士、日本小児科学会認定医。日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会担当常任理事、吉村小児科(文京区)院長。地域で子育て支援セミナーの開催、子育て相談、ブックトーク、絵本の読み聞かせなどを行い、子育て支援に力を注いでいる。著作に『はじめよう臨床医にできる子育てサポート21』(医学書院)ほか

情報に振り回されず、自分で情報整理して判断を

住んでいる地域によって受けた影響に違いはあっても、メディアから次々と与えられる情報に、大人も子どもも大きなショックを受けて、傷ついたのが今回の震災でした。
 
どんなことに不安を感じ、どんな対処をとるか、人それぞれの価値観の違いも露呈されたのではないでしょうか。
 
家族でも、仲の良い友だちでも、考え方は人それぞれ。人と考えが違うからといって不安に思う必要もありませんし、反対に自分と考えが違うからといって相手の考えを否定するものではありません。
 
それぞれの考えを尊重しあって、自分が安心なこと、自分にできることをみつけることが大切です。
 
それは、さまざまな情報が飛び交う中で、どの情報を取捨選択するかというこ
とにも共通します。
 
現状としては、チェーンメールのような偽情報が流れることもありますから、常に「この情報の発信源はどこだろう?」と注意を払い、判断を保留することも一つの方法です。
 
ママ友から口コミで聞く話も、全てが正しいとは言い切れません。故意ではないにしろ、間違った情報が含まれていることもあるでしょう。
 
情報一つ一つに振り回されることのないよう、日頃から自分の考えを整理する習慣を身につけましょう。

 

PTSDへの対応を知っておこう

安全が脅かされるような恐ろしい体験によって心の傷(トラウマ)をおってしまった場合、心的症状や食欲不振、下痢といった体調の変化、フラッシュバックといった症状が1カ月以上続くと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されます。

 

心の傷を受けた子どもたちは、その体験をなんとか消化しようとさまざまな行動でサインを出します。そのサインは年齢によって異なり、幼児期では赤ちゃん返りをしたり、トイレのしつけがうまくいかなくなることもあります。

PTSDの症状や大人にできる支援方法が、日本小児科医会のホームページ内「PTSDリーフレット」で取り上げられています。余裕のある時期に一読し、子どもたちの心のケアに役立てましょう。
http://jpa.umin.jp/kokoro.html

 

不安に思うこと、自分の考えを紙に書き出してみよう

考えを整理するというのは、とても大切なことです。例えば、自分が不安に思っていることを、紙に箇条書きしてみましょう。そうすると、自分がどんなことに不安を感じているのかが明確になりますし、何らかの方法で解決できることと、考えても仕方がないことが見えてくるでしょう。
 
いつくるかわからない大地震が不安なら、ライフラインが途絶えてしまうなどいざという時のために、最低3日分の水と食料、赤ちゃんの生活用品を用意したり、放射性物質について不安を感じるなら、食品の産地に配慮するのもいいでしょう。被災地の現状に心が痛むなら寄付をする、産地の生産物を買って応援するなど、自分にできる貢献をみつけましょう。
 
何をしても不安をかき立てられる場合には、不安材料となる情報を断ち切る(テレビやメディアを見ない・聞かない、聞く時間を制限する)事も有効です。
 
同じように情報発信されていても、そこから感じ取ることは人それぞれです。自分がどうすれば安心・安全を感じられるのか、日頃から自分なりの基準を知っておけば、自ずと解決策がみえるでしょう。

親がやみくもに不安を抱いていると、子どもも影響を受け、不安定になってしまいます。自分が親に迷惑をかけたり嫌われたりしないように親の顔色をうかがい、ガマンすることもあります。


 

ストレスは、夜泣きや指しゃぶりのような形であらわれることもあれば、元気そうに見えても、いつもよりテンションが低かったり、高かったり、常にイライラするなどさまざまです。

子どもは、赤ちゃんの時はもちろんですが、中学生ぐらいまでは安心・安全の中で育ててあげたいもの。子どもに安心を与えるためには、ママ&パパ自身が安心して生活できるように、不安材料を一つ一つ解消していきましょう。
 
子どもに対する声掛けも、やみくもに「大丈夫」と言うのではなく、「いつになればこうなるから大丈夫」「何があるから大丈夫」など、より具体的に示してあげるといいでしょう。子どもがきちんと眠れているか、食べられているか、遊べているかを見守ってあげてください。安心をたっぷり与えてあげると、大人よりも子どもの方が不安からの立ち直りは早いものです。
 
とはいっても、親だけがガマンし、すべてを抱え込むべきではありません。親だって人間ですから、悲しければ子どもの前で泣いてもいいのです。でも、「子どもに自分がどうみえているのか」は、意識して行動しましょう。子どもを愚痴相手やストレスのはけ口にはしないことです。

イラスト/犬塚円香 取材・文/山田治奈

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