もくじに戻る

カテゴリー別もくじ

miku's select

バックナンバー

入園、進級する子どもへの寄り添いかた

子どもの自立の第一歩を応援!

入園、進級する子どもへの寄り添いかた

春。入園、進級のシーズンは、子どもにとって、新しい居場所、新しい先生、友だち……と、回りの環境が大きく変化する時期。親として、この時期の子どもにどう寄り添ったらいいのでしょうか。子どもの発達に詳しい岩立京子先生にお話を伺いました。

岩立京子先生
東京学芸大学教授。臨床発達心理士、学校心理士。専門は発達心理学、幼児教育。乳幼児期の発達やしつけなどについて研究している。著書は『いい母は、いい子をつくれない』(経済界)など多数。1男1女の母。

子どもの自立の第一歩となる重要な転換期

もうすぐ入園、進級。これまで、ごはんもお風呂も遊ぶのも、トイレタイムもお母さんが見守ってお世話をしてきた子どもが、新しい世界にはばたく季節です。生活基盤が家庭から幼稚園、保育園に移行する“つなぎ目”となるこの時期は、子どもの自立の第1歩となる重要な転換期といえます。
 
子どもの心身が発達し、何かを学ぶ際の基礎条件となる一定の知識・経験・体の準備などができあがっている状態を、心理学の専門用語で「レディネス」と呼んでいます。

入園にあたっての「レディネス」は、ひと昔前までは、「子ども自身とその親が準備する」という考え方が主流でした。 しかし最近では、「子どもとその親だけでなく、幼稚園や保育園、児童館など地域の子育て施設がいっしょに関わり準備していく事で、子どもがスムーズに新しい環境の中に入っていける」という流れに変わってきています。

家庭が子どもにとって安心、安全な場所かを確認する

この時期、親はどのような事を心がけ、どのように子どもに寄り添えばよいのでしょうか。大切な事は3つあります。
 
まず1つ目は、親子が愛着や信頼関係で結ばれ、家庭が子どもにとって安心できる場所になっているかを確認すること。子どもは、親にほめられたり認められたりする事で、「自分は親から大切にされ、愛されている存在なんだ」と実感します。これが子どもの自尊心につながり、園という新しい世界で、その子らしくいられる事を支えるのです。
 
2つ目は、子どもの衣・食・住と生活リズムが整えられているかを確認すること。子どもの健康を願い、3度の食事を規則正しく用意し、そのときどきに適した服を着せ、安心して眠れる場所を提供することで、子どもは基本的な欲求が満たされます。その結果、家庭は子どもにとって“安心して帰れる場所”となり、外に出ていく意欲が養われるのです。

3つ目は、友だちを思いやるなど集団で暮らす中での決まりを教えること。たとえば児童館で友だちとおもちゃの取り合いになった時は、「○○ちゃんが欲しい物は他の子も使いたいのよ。順番に遊ぼうか」とか「ほら、あそこにも楽しそうなおもちゃがあるよ。見に行こうか?」など、子どもに遊び方のルールを教えたり、「楽しい」と思う別な視点を提案してみましょう。その子の成長にふさわしい “マイルドなしつけ”を根気良く続けることで、子どもは相手の気持ちを思いやり、時に配慮したり、自己コントロールすることの大切さを理解していくものです。
 
このように、子どもにとって、家庭が安心・安全な場所であり、家庭内にある程度の秩序とルールができ上がっていると、入園、進級といった転換期においてもその子が本来持っている知的好奇心や探究心が自然と発揮され、新しい世界を広げやすいといえるでしょう。

家族全体で子どもの新しい門出をサポート

いくら家庭が安定していても、子どもの性格や気質によっては、すんなり新生活のスタートをきれないことがあるのも事実。入園、進級してしばらくしても登園をいやがるなど「うちの子はどうも園になじめていないみたい」と感じる場合は、ひとりでかかえこまず、園の先生に子どもの様子を伝え、共にサポートしていくことが大切です。園でお母さんと離れられず泣き叫ぶ子どもの姿を見ると、本当に切ないもの。でも、こんな時こそ、親子で一歩成長できる大きなチャンスです。思い悩むことも多いでしょうが、「私がゆれたらこの子もゆれる」と思い直し、不安なことは先生に相談して解消し、親自身が前を向いていけるようにしましょう。

この時期は、お父さんの存在も重要です。仕事が忙しくても、今は電話やメール、SNSなどあらゆる手段でコミュニケーションがとれる時代。いっしょにいられる時間は少なくても、「幼稚園バッグかっこいいね」など、お父さんからの何気ない言葉が、子どもには大きな励みになります。家族全体で、子どもの新しい門出をサポートしていきましょう。

プロセスを大切にし、その子の存在を認めてあげる

子どもが集団生活に入るこの時期、親はどうしても、子どもの「できる」「できない」に目を向けてしまいがち。でも、「入園までに○○ができるようにさせなきゃ」などといきり立つ必要はありません。ボタンがうまく止められない子どもに「できるまで練習しなさい」と無理やりやらせるのでなく、まずは大きいボタンの服を選んで「やってみる?」と声をかけ、できたらたくさんほめ、子どもに自信をつけさせる事が大切です。このような対応は、子どもへの“甘やかし”ではありません。“賢いかかわり方の工夫”です。
 
今の教育の中で、確かに結果は大事ですが、しかし、それよりも大切なのは、結果に至るまでのプロセス。

それぞれのプロセスを見守り、「がんばったね」「ここまでできたね」と支えてあげる事で、子どもも「もう少しチャレンジしてみよう!」と一歩一歩頑張る気持ちが生まれます。親が「この子は何をやってもダメ」と思ったら、子どもだってやる気が出ません。その子の存在、その子らしさを認められるのは、親だからこそできることです。
 
子どもを信じて見守り、良い所を見つけて伸ばしてあげましょう。おおらかな気持ちで、園という新しい世界にはばたく子どもの成長を見守っていきたいものです。

入園、進級何でもQ&A

入園前の子どもに、どんな言葉かけをしてあげたらいいの?

 

子どもは子どもなりに、自分が新しい環境で生活することをうすうす感じ、期待と不安がまざった心理状態です。入園前の子に「○○できないと、幼稚園に入れてもらえない」なんて、脅したりするのはNG。「お友だちがいっぱいできるね」「絵本がいっぱいあるよ」、進級する子には「お兄ちゃん(お姉ちゃん)になるね」など、子どもが楽しい気持ちになるような言葉をかけましょう。

子どもがどうしても園になじめない場合はどうすればいいの?

 

まずは園を信頼して、子どもの気になる様子を伝え、コミュニケーションをとっていくことが大切です。しかし、何度伝えても親身になってくれなかったり、納得できる対応をしてもらえない、子どもに対する見方が厳しく園全体に信頼が持てないなどの場合は、子どものための選択肢として転園を考えても良いと思います。いずれの場合もひとりでかかえず、家族や信頼できる友人に相談する事も大切です。

 

トイレトレーニングが終わらず心配です

 

トイレトレーニングは叱ってできるようになるものではありませんし、 入園に向けて焦ってトレーニングしても、おむつは取れる時にならないと取れないもの。おむつが取れていない子は、園がサポートしてくれますので、園と協力しながらその子のペースで進めていきましょう。期限を決めてがんばる必要はありません。

食べるのが遅く、好き嫌いも多いうちの子。持参したお弁当を園で全部食べられるか心配です

 

最初は確実に食べきれる少なめの量のお弁当を用意し、様子を見ながら量を増やしていきましょう。子どもが好きな献立を心がけ、ひとりで食べられる形や大きさを工夫するといいですね。まずは「全部食べた!」という自信をもたせてあげる事が大切です。

イラスト/山下アキ 取材・文/長島ともこ

  • <前へ
  • 1
  • >次へ

もくじに戻る

カテゴリー別もくじ

miku's select

バックナンバー