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家族で事前にイメージしておくことが大切 ダブルケアになったらどうする?

家族で事前にイメージしておくことが大切

ダブルケアになったらどうする?

子育て中の家族が、育児と介護を同時にしなければいけない「ダブルケア」。出産の高齢化に伴い、親に子育てのサポートを頼れないばかりか親が倒れてしまい、子育てしながら親の介護をしなくてはいけない家族も増えてきています。将来自分たちがそのような状態になった時、どのように向き合えばよいのでしょうか。また、どのようなサポートが得られるのでしょうか。ダブルケアの研究活動や家族支援に関わる相馬直子先生に伺いました。

相馬直子先生
横浜国立大学大学院国際社会科学研究員准教授。ダブルケアを研究課課題とし、実態調査やダブルケアサポーター養成など支援策の検討を行う。家族政策の国際比較研究、保育、幼児教育政策に関する比較研究なども行っている。1児の母。
http://double-care.com/

「育児」と「介護」を同時進行で行う「ダブルケア」

「ダブルケア」という言葉を、聞いたことがありますか? 「ダブルケア」とは、英国ブリストル大学・山下順子さんとの共同研究で作った言葉。文字通り、育児で子どものケア、介護で親のケア……と、育児と介護を「ダブル」で同時に「ケア」をする状態のことを言います。その担い手は、主に現役の親。かつては、育児がひと段落してから年老いた親の面倒をみていたのが、晩婚化や出産の高齢化などにより、育児と介護を“同時進行”せざるを得ない状況になってきているのです。
 
ひと言で「介護」と言っても、「病気の親と同居し通院や食事づくりなどの面倒を見ている」「近くの介護施設に入居している親の様子を時々見に行く」などいろいろなパターンがあります。「大きな病気を患ってはいないけれど、別居してひとり暮らし、または夫婦で住んでいる年老いた親の様子を定期的に見に行く」「離れて住んでいる高齢の親に定期的に電話して安否を確認する」なども、広い意味で考えれば「介護」ととらえることができます。このように考えると、「現在ダブルケアに直面している」ママは、年々増加傾向にあるといっても過言ではありません。少子高齢化、晩婚化、出産年齢の高齢化が進むなか、今後日本ではますますダブルケア人口が増えていくことが予想されます。

 

医療の発達により平均寿命がのびて高齢化が進んでいること、少子化により、介護を分担する兄弟や姉妹も減ってきていることなども重なり、ダブルケアラーの負担は精神的にも肉体的にもかなり大きいもの。さらに、共働き家庭のママやパパの場合は、育児、介護と仕事とのバランスも考えなくてはなりません。

「子どもとじっくり過ごす時間が持てない」という罪悪感

ダブルケアは、それぞれの家庭によって、実にさまざまな状況が浮かびあがってくるものです。そして、忙しい毎日の中で、育児、介護、仕事に奮闘し、悩むママたちの切なる思いも聞こえてきます。
 
中でも、「夫が家事や育児、介護に協力的でない」という状況がダブルケアの大変さを増加させています。「精神的にしんどい」「体力的にしんどい」と大きな負担を感じているママが多数存在しています。乳幼児の子育て真っ最中のママからは、「ダブルケアで忙しくて、地域の子育てひろばに連れていってあげられない」など、子どもを遊ばせる時間、子どもと落ち着いて向き合う時間を十分に持つことができないことを気にする声も上がっています。
 
「育児の悩みはママ友と共有できるけれど、ダブルケアの悩みはママ友にはなかなか話せない」「ママ友にダブルケアのことを話したら『大変ね』と同情されてランチなどに誘ってもらえなくなり、寂しい思いをした」といったケース、「親(義理の親)の緊急時に子どもを一時的に預ける場所が見つからず、子どもと一緒に役所や病院に足を運ばなければならず、てんてこまいだった」というケースもあります。ダブルケアに直面している多くのママは、母、妻、嫁、娘、労働者など、一人で何役もこなしながら“孤軍奮闘”していると言えるでしょう。

イラスト/サカモトアキコ 取材・文/長島ともこ

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