日々のニュースや話題の中で、子育てに関連するキーワードや子育て中の家族に関心が高そうなワード、知っていただきたい事柄などを編集部がピックアップ。できるだけ分かり易く、簡単な解説と共にご紹介いたします。 2007/3/1 産科無過失補償制度
医療事故(あるいは医療過誤)というのは我々素人にはわかりにくい部分です。どこまでが医師のミスでどこまでが必然として起こった事故であるか、厳密に判断することは不可能と言っても過言ではありません。しかし、特に出産時については、医療過誤の認定が難しい一方で、患者の両親に与えられるダメージは大変深いものがあります。そのため産科医に対して起こされる訴訟の数は、年々急激に増加しています。 元々激務であることに加えて訴訟が大変増えているという現状を反映してか、産科に進む医師の数は極端に減少してしまいました。2006年10月20日の話題のキーワード「妊娠中毒症・子癇と産院の数」でも触れましたが、現在では公立の病院でさえも産科の看板を外している地域が珍しくありません。 「産科無過失保障制度」についてはこのような背景の下、患者、医師、政府それぞれの立場の必要性から発生していますが、最初に提言を行ったのが日本医師会であることは、産科医の置かれた窮状を象徴的に表しているといえるでしょう。 当面この制度の適用は、原因の特定が難しいとされる脳性マヒのみが対象となります。今後は適用範囲の拡大、また産科から小児科への対象の拡大も計画されていますが、大部分は未定のままです。保障のための財源は医師、国、患者で負担することになりますが、まだしばらくは綱引きが続きそうです。また、2000〜3000万円という補償額が適切であるのか、という意見や、この制度の導入によって医師の医療過誤が覆い隠されてしまうのではないか、といった意見なども患者側から提出されています。 この制度について、様々な立場から議論が噴出しています。しかし、少子化に歯止めをかけたい政府が前倒しでこの制度の実現に取り組んでいることは、一定の評価を得るべきであると考えます。 |