2012年スタートの
単独不活化ポリオワクチン接種が必要な子どもが約146万人(※)と推定されています。接種歴を確認して、4回目まできちんと接種を完了させましょう。
崎山弘先生
崎山小児科(東京都府中市)院長。予防接種に関する研究に関与し、厚生労働省予防接種研究班で予防接種率についての調査を担当。予防接種の啓発と普及に努めている。
ポリオはウイルス性の病気で、便から水を経由して感染します。ウイルスに感染していても発症しないケースも多くあり、感染が見えにくい病気でもあります。
ポリオが発症すると、手や足に麻痺があらわれ、その麻痺が一生残って歩行が困難になることがあります。重症の場合は死に至るケースもある怖い病気です。
ポリオには、有効な薬や確実な治療方法がありません。日本では30年以上にわたり、野生型ポリオの発症は報告されていませんが、海外からポリオウイルスが入ってくる可能性があります。ポリオワクチン接種で、子どもを守ることが不可欠です。
以前は、生ポリオワクチンを接種していましたが、まれにポリオにかかったときと同じ症状(手足の麻痺)が出ることがあったため、2012年9月から不活化ポリオワクチンが定期接種として導入されました。不活化した(生きていない)ウイルスから作られているため、ポリオと同様の症状が出る心配がありません。
2012年7月以前に生まれ、不活化ポリオワクチン接種が必要な子どもが約146万人(※)と推定されていますが、最初の3回の接種も残念ながらまだ全員が完了しているわけではありません。不活化ポリオワクチンは4回の接種が必要です。母子手帳を確認し、受け忘れていたら、速やかに接種しましょう
※第4 回不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会(平成24年8月2日実施)資料より
初回免疫と追加免疫があります!
不活化ポリオワクチンの接種は、初回免疫と追加免疫があります。初回免疫は、生後3か月から3~8週の間隔をあけて、3回接種します。追加免疫は標準として初回免疫終了後12〜18か月(最低6か月以上)、あけて1回接種します。右の「経口生ポリオワクチン未接種者」と「経口生ポリオワクチン1回接種者」のスケジュールで、確認しましょう。
不活化ポリオワクチンについての疑問を、崎山弘先生にお答えいただきました。
不活化ポリオワクチンにはどんなものがありますか
現在日本での定期接種として接種できるのは野生株由来不活化ポリオワクチンと、セービン株由来不活化ポリオワクチンの2種類のワクチンです。
野生株由来不活化ポリオワクチンとは、自然界に存在するタイプ(野生株)のポリオウイルスを不活化したものです。野生株由来不活化ポリオワクチンは1955年から世界で接種が開始され、2億7300万本以上接種されています。日本では単独ワクチンとして2012年9月から定期接種が開始されています。
何回接種したのか、忘れてしまいました。
母子手帳を確認しましょう。
母子手帳の予防接種の記載を確認しましょう。母子手帳を見て分からない場合は、かかりつけの小児科に相談しましょう。
単独不活化ポリオワクチンの副反応について教えてください。
1週間は副反応の出現に注意しましょう。
単独不活化ポリオワクチンの主な副反応は、接種部位の赤みや腫れで、そのほか発熱が報告されています。多くの場合、注射部位の赤みや腫れは3~4日で消え、発熱は1~2日で下がりますが、1週間は副反応の出現に注意しましょう。
4回目も接種しなければいけないのですか?
4回接種が完了していないと効果が不確実なのできちんと接種しましょう
日本では30年以上にわたり、自然界に存在するポリオウイルスによるポリオの発生が報告されていません。しかし、海外ではポリオが発生している国があります。日本は海外との行き来が活発なため、さまざまなルートからポリオが入ってくる可能性があり、世界からポリオが撲滅されるまで、ポリオワクチンを接種することが必要です。不活化ポリオワクチンは4回の接種が必要です。4回接種が完了していないと効果が不確実なのできちんと接種しましょう。
取材協力/サノフィ株式会社