4月に進級・入園・入学を迎えるお子さんは、新しい集団での生活が始まります。進級・入園・入学を控えたこの時期に、ワクチンの接種もれがないか、確認することが大切。小児科医の森岡一朗先生にお話を伺いました。
神戸大学大学院医学系研究科
内科学講座小児科学分野
講師・診療科長補佐
森岡一朗先生
医学博士。兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科医長、米国スタンフォード大学新生児・発達部門、愛仁会千船病院を経て、2007年神戸大学医学部附属病院小児科助教、2012年より現職。
4月からの進級・入園・入学を控えたママパパは必要用品の準備や名前つけ・チェックなどに忙しいことでしょう。今の時期に是非もう1つ見直してほしいのは、ワクチンの接種歴です。入園・入学して集団生活になると、病気にも感染しやすくなります。病気になると抵抗力が低下して、重篤な病気にかかる可能性が高まるので、受けられるワクチンは全て受けておくことが大事です。診察に来たママパパに聞くと、「必要なワクチンは全て受けさせた」と思っている方が多いのですが、よくよく確認してみると、受け忘れているワクチンがあることが少なくありません。受け忘れているワクチンで特に多いのが、不活化ポリオワクチンの追加免疫(4回目の接種)です。追加免疫は3回目の接種から6~18か月の期間があいてしまうために、忘れてしまっているケースが多くみられます。進級・入園・入学前の時期には、受け忘れているワクチンがないか、母子手帳を調べたり、かかりつけの小児科医に確認しましょう。
不活化ポリオワクチンの接種は、初回免疫と追加免疫があり、接種は4回セットです。下の「経口ポリオワクチン未接種者」と「経口生ポリオワクチン1回接種者」のスケジュールを確認しましょう。
ポリオは、口から入って腸で増えるウイルス性の病気です。便から感染が拡大します。大人もかかり、感染していても症状として現れないことも多いのですが、乳幼児がかかると特に心配な病気です。
神経系の麻痺を起こすこともあり、手や足に麻痺があらわれたり、麻痺が残って一生、歩行困難になることもあります。場合によっては死に至るケースもあります。
ポリオは、有効な治療法や治療薬がありません。ワクチン接種が唯一の予防策です。
日本では30年以上にわたって野生型(自然界にある)のポリオの発症は報告されていませんが、西アジアやアフリカ、中国などではポリオの発症が報告されています。海外との行き来が盛んな日本にも、知らない間に入ってきて、また流行してしまう可能性もあります。そのため、きちんと決められた回数(4回)のワクチンを接種しましょう。
不活化ポリオワクチンの十分な効果を得るためには、追加免疫(4回目の接種)を受けることがとても重要です。右のイメージ図のように、初回免疫だけだと、ウイルスに対する免疫力が低下してしまう可能性があります。期間をあけて追加免疫(4回目の接種)を接種することで、免疫力がグンと高まることが報告されています。
上のイメージ図にあるように、ポリオの免疫力をアップさせるためには、4回目の接種がとても重要です。不活化ポリオワクチンは免疫に必要な成分だけを取り出してワクチンを作っているため、注射してもポリオにかかることはありませんが、接種から時間が経つと免疫が少しずつ落ちてきます。この免疫をアップさせるために、決められた4回目の接種をタイミングを守って受けることが必要です。
現在、不活化ポリオワクチンには、単独の不活化ポリオワクチンと四種混合ワクチンの2種類がありますが、ワクチンを作るのに使われているワクチンの株(ワクチンを作る上で元になるウイルスのタイプ)が異なります。単独の不活化ポリオワクチンを3回接種後、追加免疫として4種混合のワクチンを接種した場合の抗体価(ウイルスや細菌から体を守る免疫の強さ)を示すデータはありません。そのため、最初に使用した不活化ポリオワクチンを最後まで使用することが推奨されています。
ママパパの中には、ワクチンを受けさせず、病気にかかって免疫をつけさせる方がいいと考えている方もいます。でも、それはとても危険な方法です。ワクチン接種がある病気は、かかった場合に命に関わったり、重篤な障害が残ったり、合併症を引き起こす可能性があるものばかりです。子どもの健康を守るために是非ワクチンを受けさせましょう。
取材協力/サノフィ株式会社
http://vaccine-net.jp
入学入園前のこの時期に、母子手帳を手元に用意して、以下のチェックリストを使用して確認してみましょう!
http://www.vaccine-net.jp/checksheet