言葉っておもしろい!
絵本の魅力は多様です。今回は、絵本編集者の土井章史さんに、まだ言葉をあまり理解していない赤ちゃんでも言葉のリズムや音を楽しめるものや、言葉のおもしろさに気づかされる本をピックアップしていただきました。
土井章史さん
1957年広島市生まれ。東京・吉祥寺の絵本専門店トムズボックス(http://www.tomsbox.co.jp/)を経営するかたわら、フリーの絵本編集者として300冊以上の絵本を企画編集。若手作家の育成にも力を注いでいる。編著に『長新太-ナンセンスの地平線からやってきた』(河出書房新社)。
絵本と子どもの関係は、とても不思議。言葉がわからない赤ちゃんも、絵本を読んでもらうのが大好きです。それは、絵本が親子をつなぐスキンシップツールである証し。読んでもらうときに感じられる体温や安定・安心から、自分の居場所を見つけられるようになるからです。
絵本を読んであげるとき、大人はつい結論や答えを求めてしまうものですが、むしろ大切なのは、絵本をきっかけに広がる世界。そこからふくらむ想像や、「?」と考えたり、新たに気づく「!」な発見でしょう。
たとえば長新太さんのナンセンスな世界も、子どもにとってはワクワクドキドキ。「プアー」というそれだけの言葉の中に、無限の何かをつかみます。それは、童心を忘れてしまった大人には理解できないものかもしれません。
ですが、「プアー」という楽しそうな音の響きにはなぜかひかれ、子どもと共感できるのではないでしょうか。音の響きやリズムが心地よい絵本は、赤ちゃんから楽しめておすすめです。
生きていく上で、言葉力はあらゆる面で重要です。言葉を好きになるきっかけとして、絵本は大きな役割を果たしてくれるでしょう。音の響きやリズムだけでなく、言葉遊びのできる絵本や、言葉をていねいにやさしく伝えるあたたかな絵本。言葉と向き合える絵本はいろいろあります。とは言え、絵本は言葉を学ぶためのお勉強ツールではなく、あくまでスキンシップツール。読んでいるときの楽しさを、大人も一緒に味わいましょう。
擬音や擬態語の絵本には、つかみどころのない魅力がいっぱい。想像力をかき立てられ、摩訶不思議な世界に引き込まれます。
にゅるぺろりん
絵:長新太
文:谷川俊太郎
出版社:クレヨンハウス
長新太さんの独特な色の世界に、詩人・谷川俊太郎さんが不思議な音をつけた本。「にゅる」や「ぺろりん」のイメージをまだもたない赤ちゃんからどうぞ。
理屈抜きに言葉っておもしろい! と感じられることこそが、言葉力をはぐくみます。ただただ、とにかく楽しんで。
まる さんかく ぞう
作・絵:及川賢治・竹内繭子
出版社:文溪堂
鮮やかな色と、斬新なデザイン、シンプルな言葉と絵。色も形も名称も、大きさの概念もまだわからない赤ちゃんにとって、新発見が詰まった言葉の絵本。
ていねいでやさしい日本語は、聞いていてとても気持ちいいもの。
そんなやさしい日本語を子どもに吸収してもらいたいですよね。まあるくて、あったかくなります。
こりゃ まてまて
作:中脇初枝 絵:酒井駒子
出版社:福音館書店
鳥や虫や動物を追いかけると、逃げてしまう……お散歩が大好きな子どもにとって、身近に感じられるお話です。「こりゃ、まてまて」の繰り返しに子どもは安心します。
パンちゃんのおさんぽ
作・絵:どいかや
出版社:BL出版
「でんぐるでんぐる」という繰り返しに加えて、思いやりがあって、やわらかくていねいな会話が繰り広げられ、ほのぼのとします。帰り道には「ぐるでん」と……。
取材・文/山田治奈