外出時のガードと心がけが大事
春の訪れとともに紫外線が強まってくる季節。紫外線を浴びすぎると、デリケートな赤ちゃんの肌にはどんな影響があるのでしょう?対策として何をしたらいいのでしょう?小児科医の高橋菜穂子先生に教えていただきました。
高橋菜穂子先生
小児科高橋医院(町田市)院長。専門は感染・免疫、アレルギー。ホームドクターとして、病気はもちろん育児全般に対する相談に応じ、ママたちの心強い味方。温かな笑顔と思いやりあふれるアドバイスが好評。
赤ちゃんの肌は、大人の肌に比べて非常に薄くてデリケート。外部からの刺激をダイレクトに受けやすく、メラノサイト(色素細胞)が未発達で紫外線から肌を守ろうとするメラニンの生産能力も低いため、肌を守るために適切な対策をする必要があります。
紫外線を大量に浴びると、皮膚細胞の遺伝子(DNA)が損傷を受け、日焼けを起こしたり、色素沈着やしわの原因になるなど、皮膚に悪影響を及ぼします。
DNAが傷ついた状態で細胞分裂すると、間違った情報が伝達されて異変が生じ、将来的に皮膚がんを発症することもあることが指摘されています。
一生に受ける紫外線量の大半を18歳までに浴びるとされ、赤ちゃんの頃から肌をガードせずに紫外線を繰り返し浴びると、遺伝子は多くの損傷を受け続けることになります。大人よりも子どもの方が、皮膚の新陳代謝が活発で細胞分裂のサイクルも早いため、DNAが変化して皮膚がんになるリスクはいっそう高まることに。一生を通じて紫外線対策をした方がいいことは確かですが、最も肌がデリケートな乳幼児期にきちんと対策することは、将来に及ぶ悪影響を避けるうえで特に重要というわけです。
紫外線対策としては、直射日光を遮断して肌を守るのがベスト。帽子を被る、長袖長ズボンで肌を隠す、日焼け止め(サンスクリーン剤)を塗ることが基本になります。とはいえ神経質になる必要はなく、日射しの弱い朝30分程度のお散歩なら帽子と長袖を着用する、公園で午後1時間以上遊ぶなら日焼け止めを塗るというように、外出の時間や状況に応じた対策をしましょう。特に日射しが強い日中の外出時は、UVカット素材のウエアや首の後ろ側にフラップのついた帽子を選ぶとより安心です。
スリングで抱っこの赤ちゃんは、ママの日傘のガードでも充分です。ベビーカーに乗せる場合は、ひさしをいっぱいに広げ、手足が日光にさらされた状態にならないよう気をつけましょう。色白ですぐ赤くなる肌タイプだと、紫外線の被害を受けやすいので、ママがこのタイプなら子どもも注意しましょう。
一方、日焼け止めの使い過ぎにより、くる病になるケースが報告されるようになりました。くる病とは、ビタミンD不足により骨の成長に異常が起こる病気。日焼け止めを使うことで、十分なビタミンDが体内で作られなくなることが原因です。くる病を防ぐためには、最低1日15分ほどでいいので、日焼け止めを塗らずに戸外へ出る時間を作ることが大切です。
最近、アトピーに対する紫外線の良い効果も報告されています。あまり神経質になりすぎず、強い日焼けが起こらない状況では、日焼け止めを使わずに過ごす時間があってもいいかもしれません。
青空の下で自然に親しみ、元気いっぱい遊ぶことは、子どもの心と体の健全な発達にとても大切です。日焼け対策をしっかりマスターし、悪影響をできるだけ少なくした上で、戸外での活動も楽しみましょう。
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子