入園・進級シーズンにおさえておきたい
この時期、入園や進級で新しい環境を迎えている人も多いのではないでしょうか?新しい環境は、ママやパパにとっても不安がつきものです。よく聞かれる疑問について、心理カウンセラーの内田良子先生にお答え頂きました。
内田良子先生
1942年生まれ。心理カウンセラー。子どもの相談室「モモの部屋」主宰。1973年より東京都内の保健所および保健福祉センターで心理相談員として乳幼児の子育て相談に携わっている。NHKラジオ「子どもの心」相談アドバイザーとして活躍中。著書は『カウンセラー良子さんの子育てはなぞとき』『カウンセラー良子さんの幼い子のくらしとこころQ&A』『登園しぶり 登校しぶり』(いずれもジャパンジャパンマシニスト社)ほか
出勤時間の都合で、担任の先生と顔を合わせられない場合は?
早番から担任、担任から遅番の先生に日中の子どもの様子がすべて引き継ぎがされているかというと、難しいというのが現実でしょう。それでも、当番の先生は子どもたちと自由保育の時間を一緒に過ごしているわけですから、帰り際にはその日の様子を聞いてみるといいですね。園に着いたらまずさっと連絡帳に目を通し、担任からの連絡事項を頭に入れた後に当番の先生と話をする日をつくると、具体的に「今日はいつもよりも甘えてくることが多かったので、昼に何かあったのかもしれませんね」など、その先生なりのアドバイスをもらえると思います。
登園時も、その日の子どもの様子で気になることがあれば、連絡帳に書くだけではではなく、朝番の先生にも口頭で伝えれば、不安定な子どもへの配慮をしてくれるでしょう。連絡帳はあくまで連絡帳。部分情報に過ぎません。微妙なニュアンスまでは伝えられませんし、書き方によって受け取り方が違うこともありますから、連絡帳だけに頼らず、直接対話していろいろな先生との情報交換を心がけましょう。
ママ友・パパ友を作りたくても、チャンスがないときは?
保育園ママやパパは、各家庭ごとに送迎時間が違うこともあって、ママ友・パパ友が作りにくいかもしれませんね。そんなとき、保護者会や園の行事にできる限り出席するのはもちろんですが、父母会の役員になってみてはいかがでしょう。仕事が忙しいからと、父母会役員を敬遠するママやパパも多いようですが、実際にやってみるとメリットもたくさん。父母会は、園児のために目的をもって活動をしているので、共に何かを成し遂げる仲間として、送迎であいさつを交わすだけよりも親密な交流ができます。
違う学年のママとも情報交換ができるので、子育ての先輩に相談をしたり、自分が先輩として相談されたりといったことも。また、保育園事情や先生方の勤務態勢や保育方法の情報も入ってくるので、普段はみえない園の様子が分かることもあるでしょう。何より、子どもにとっては自分と友だちのママ・パパ同士が仲良く活動していることはうれしいことでしょう。
みんな働くママ・パパですから忙しいのはお互い様。「週末も仕事なので○○はできないけれど、こんなことならできます」と最初に事情を話せば、役割分担ができるはず。面倒と避けずに、できる範囲で参加してみてはいかがでしょう。
教育方針の違うママとどうやってつき合えばいい?
幼稚園は、保育園と比べて帰りの時間が早いので、幼稚園帰りに時間もたっぷり。子ども同士が遊びたがり、ママ同士の交流も増えるでしょう。そんな中で、テレビやゲームなどメディアに対する考え、おやつの与え方など、教育方針の違いを感じることも少なくないと思います。
ここで忘れてならないのは、「ママ友とは、自分の友だちではなく、子どもの友だちのママ同士」ということ。ママ友の目を気にしながら交流をするのではなく、まず「子どもにとってどうするのが一番適切か?」を考えながら行動しましょう。互いの家を行き来する仲なら、「うちで遊ぶ時はマンションだから走らないでね、テレビゲームはなしね」など、遊び場となった家のルールに沿うようにするとトラブルが減ります。
ルールを伝えるときも、ママ友に了解を得るのではなく、ホスト役の親が最初に子どもに直接伝えると子どもは素直に従います。
帰宅後に子どもがイライラ… 園で何かストレスがあるのか心配
入園・進級などで新しい環境になるこの時期は、子どもにも緊張や不安からストレスがたまりやすいものです。友だち関係にも変化があるかもしれませんし、原因は複合的に考えられそうですね。ママやパパがお子さんを見ていて園生活に不安を感じるなら、まずは送迎の時間にゆとりをもってみてください。ママやパパが園まで連れて行っている場合には、子どもの送り迎えの時、仕度をしながら5分でも10分でも長く子どもと一緒に園にいる時間をつくると、クラスの雰囲気が思いのほかよくわかります。先生に相談してまかせてしまうのと違って、園でママと過ごせる時間が増えると、子どもが慣れるまで「ママと一緒にいられる、ここは安心できる場所」というイメージを園に持てるのでおすすめです。
園での子どもの生活の様子が気になるなら、見学させてもらえるよう園に依頼してみましょう。春先は、先生にとっても新しい環境ですから、園児ひとりひとりの個性や特徴をつかみ、クラスのまとまりを組み立て始めている時期でもあります。見学してみると、お友だちや先生との関係だけでなく、「難しい課題にも取り組んでいるんだな」「給食の時間が苦手なんだな」と、家庭で見ている子どもとは違う姿を発見するかもしれませんよ。
子どもが担任になつきません。先生にどう相談すればいい?
園に行きたがらなかったり、「先生がこわい」と泣くなど、子どもが登園しぶりをするときは、まずはじっくり話を聞いて、不安な気持ちを受け止めましょう。聞いた話は、子どもの言っていることだからと流してしまわずに、先生に“子育てのパートナー”として子どもの気持ちと様子を事実として伝えましょう。先生も園内で子どもに目配りをしてくれるようになるでしょうし、「こういう事があったので、こんな注意をしたんですよ」と、先生の言い分も聞くことができます。子どもが感じた不安を親が気づくこともあるはずです。
登園しぶりが出たら、子どもの気になる様子を相談したいという気持ちを率直に伝え、「園での子どもの様子を伺う」姿勢で話を聞きましょう。先生も人間ですから、一方的に責められればかたくなな気持ちが生じて、少なからずしこりが残ることもあるでしょう。何度か担任の先生に相談しても子どもの様子が改善されなければ、主任や園長先生に相談してみてもいいでしょう。クラスメートのママに、わが子の様子を伝えたり、ほかの子の様子を尋ね、いろいろな方向から状況を把握してみるのもいいですね。
園でケンカをして相手の子にケガをさせてしまったら?
近ごろは、個人情報保護法の影響もあってか、トラブルになった相手の名前を教えない園が増えているようです。軽いケガの場合には、相手の名前を知らされないばかりか、ケガをさせた事実も教えてもらえないこともあります。ただし、傷あとが残るほどのケガや、歯型がつく噛みつきをしてしまった場合は「どういう状況でケガをさせ、どんな手当てをしたのか」を教えてもらえ、相手の親に謝るように言う園もあります。
相手の名前を知り、謝りたいと思うのが親の心情かもしれませんが、保育中に起こったトラブルは、園側で、子ども同士や相手の親への対応をしているはずですから、教えてもらえる範囲でその時の状況を確認し、親としてすべき事があれば聞いておきましょう。
子ども同士のケンカは何らかの理由があってすることです。相手にケガをさせてしまったわが子自身が、そのことを引きずっていることもあり、帰宅後には心のフォローが必要な時があります。いきなり叱ったり責めるのではなく、「ママ、怒らないからなんでケンカになっちゃったのか教えて」と状況を聞き、子どもの気持ちを受け止めましょう。その上で相手を押したり、噛みついてはいけないことを諭し、手を出さないで言葉で言う解決方法をアドバイスしてあげられるといいですね。
子どもが年長になると、「今日○○ちゃんとケンカしちゃったの」などと自分から報告してくることもあります。相手がわかったら、親同士が翌日の送迎で顔を合わせたときに「昨日はごめんなさいね」とひと言謝っておくと、親同士の気持ちいい関係性が保てるでしょう。