予防接種は重症化を防ぐ効果大!
毎年この時期になると、気がかりなインフルエンザ。子どもにつらい思いをさせないために、できる限り対策をして感染を防ぎたいものです。
インフルエンザ予防接種の基礎知識、万一感染した際の対応や手洗いの方法などについて、国立感染症研究所の多屋馨子先生にお聞きしました。
多屋馨子先生
国立感染症研究所感染症情報センター室長。感染症専門の病院で小児科医として多くの子どもの診察にあたるなど、子どもの感染症に詳しく、経験豊富。2人のお子さんを持つ働くママでもある。
インフルエンザは、ウイルスによって引き起こされる急性感染症の一種。ウイルス自体は通年存在しますが、日本のような温帯地方では、空気が乾燥して寒い冬場(12月〜2月頃)に患者が増加します。
インフルエンザを発病すると、急に38度以上の熱が出て、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状の他、一般の風邪に見られる喉の痛み、鼻水、咳などの症状も見られます。免疫機能が未熟な赤ちゃんや幼児は、短時間のうちに症状が悪化しやすく、高熱による体への負担が大きいだけでなく、肺炎や中耳炎、脳症などを合併する心配もあるため、可能な予防対策をしておきましょう。
対策として有効なのが、インフルエンザの予防接種。これは、受ければ発病を完全に防げるというわけではありませんが、万一発病した場合の、重症化を防ぐうえで効果的です。毎年、流行のタイプが変化するため、その年ごとの接種が必要です。
2010年は季節性インフルエンザワクチンの中に含まれる3つの型(亜型)の内の1つに、2009年パンデミックとなったインフルエンザウイルスが用いられています。今シーズンの流行がいつから始まるのか、ウイルスが変異を起こしていないか、症状は2009年と変わらないかどうかなど、注意深く観察していく必要があります。
一般の医療機関で予防接種が始まるのは10月頃。予約してから接種する病院も多くあります。13歳未満の子どもは3~4週間あけて2回接種が原則。接種後2週間ほどした頃から抗体ができ始め、2回目接種後に有効な抗体レベルになることから、流行し始める前の11月下旬か12月初旬までに2回目を終えておくのが理想です。
基本的に、ワクチン接種は生後6か月以上の赤ちゃんから受けられますが、0歳の赤ちゃんについては検討数が少なく、有効性を示す確証は認められていませんので、ご家族がインフルエンザにかからないようにすることが大切です。またインフルエンザの流行時期に、他の重篤な病気を見逃さないためにも、他の定期接種を必ず受けさせましょう。0歳の赤ちゃんの場合、基本は定期接種を優先します。同時接種は医師が特に必要と認めた場合に可能となっていますが、具体的な接種のスケジュールはかかりつけ医と相談して立てましょう。
保育園、幼稚園、小学校など、集団で過ごす時間が多い子どもは、感染しやすい状況にあります。その子の体質や病気に対する抵抗力、お年寄りが同居しているかなどの生活環境も考慮して、接種するかどうかの判断をしましょう。
妊娠中の場合は、インフルエンザを発病すると重症になる可能性があるため、予防接種を受けておく方が安心。かかりつけの産婦人科医と相談してみましょう。授乳中のお母さんがワクチン接種した場合も、母乳を介して赤ちゃんに影響が及ぶことはないとされています。
イラスト/犬塚円香 取材・文/中野洋子