規則正しい生活で免疫力アップ!
さまざまなウイルスが猛威を振るう季節。
病気に対する抵抗力の弱い乳幼児の場合、感染を防ぐにはどのようなことに気をつけたらいいのでしょう。小児科医の渡邉智子先生に、冬の病気と対策について教えていただきました。
渡邉智子先生
キッズクリニック智(東京都町田市)院長。勤務医時代、NICU(新生児集中治療室)で新生児を専門に診察する経験を経て、平成18年にクリニックを開設。地域に根ざした「街のお医者さん」として、病気の診療だけでなく、子育ての悩みにも応じ、ママたちの信頼も厚い。
冬になると、インフルエンザやロタウイルスなどのウイルスが原因の風邪が流行します。寒い時期は私たちの体の免疫力が低下しがちで、ウイルスが猛威を振るうと、人から人へ次々に感染が広がります。特に赤ちゃんは、ウイルスに対して免疫がないため、非常にかかりやすくなります。
おなかにくる風邪と言われる“ウイルス性胃腸炎”は、感染力が強いロタウイルスやノロウイルスなどが原因。どちらも下痢とおう吐という似たような症状ですが、ロタウイルスは白っぽい下痢便が特徴で、高熱が出ることもあります。
2歳未満でほとんどの子どもがかかるのが、RS ウイルスによる“呼吸器感染症”。気管支に炎症が起こり、鼻水や咳、発熱、呼吸が「ぜいぜい」と音がするなどの症状が現れます。
同じウイルスに何度か感染すると熱が出ないこともあり、ママもたいした病気ではないと思いがちです。でも、そのまま保育園や幼稚園などに通わせると、園で体調が悪くなったり、集団にウイルスを広げてしまうことにもなります。
対処が遅れると、かえって病気を長引かせ、重症になる危険もあります。熱がなくても、咳きこんだり咳でよく眠れない、1度でも吐いたり、下痢の症状があるなど、いつもと違う様子があれば、早めに受診しましょう。
ほとんどのウイルス性の病気は、有効な抗ウイルス薬がありません(※)。かかってしまったら、熱を下げる、吐き気を止めるなど、薬で症状をやわらげたり、経口補水液を飲ませるといった対症療法になります。くれぐれも無理をさせず経過を見守り、家庭で安静に過ごしましょう。
ウイルス性の病気は、感染した人の咳やくしゃみ、おう吐物などによってウイルスが空気中に飛散し、それを吸い込むことで感染してしまいます。乳幼児の場合は、児童館などでおもちゃに付着したウイルスをなめて感染する場合もあるので、病気が流行り始めたら注意しましょう。流行している時期はむやみに人混みに出ない、家族で帰宅後うがい手洗いを徹底するなど、家にウイルスを持ち込まない心がけが大切です。
しかしウイルスに接触しない生活は難しいので、まずは病気に負けない強い体を作ることが最善の予防策。子どもは「良く食べ、良く遊び、良く眠る」ことがポイントです。基礎体力がつくと、病気に感染してもかからないか、発症しても軽く済みます。
親が子どもから病気をもらうケースも多くあります。まず親自身が規則正しい生活習慣を身につけ、普段から体力や免疫力を維持するように心がけましょう。
冬場は、加湿器で加湿しすぎるとカビが繁殖し、アレルギー性鼻炎やアトピーがある子どもは、症状の悪化を招いてしまいます。ウイルス対策に適切なのは「室温20 度~25度、湿度50%~60%」。時折、窓を開けて換気しましょう。室内に洗濯物を干すだけでも、加湿に効果があります。
※ロタウイルス胃腸炎はワクチン接種で予防が可能になりました。
イラスト/犬塚円香 取材・文/中野洋子