ロックミュージシャンでありながら、子育てしているパパとしても注目しているママやパパも多いのでは。2歳4カ月の女の子と7カ月の双子の男の子のカッコイイパパです。
ダイアモンド
ユカイさん
1 9 8 6 年、伝説のロックバンド「RED WARRIORS」のボーカルとしてメジャーデビュー。人気絶頂の1989年わずか3年の活動で日本武道館公演を最後に解散。その後、ダイアモンドユカイとしてソロ活動を開始。3児のパパ。
ブログ「ユカイなサムシング」 http://ameblo.jp/diamondyukai/
「はい、パパ!」って、自分のおやつを半分わけてくれるムスメ。
音楽をかけるとダンスを踊り出したりして、一緒に踊ると楽しくてうれしくて切ない気持ちになって泣けてくることも……。
オレにとって、子どもは天使。
ロックシンガーとして、自由気ままに過ごしてきたから、子どもができない理由が無精子症だったとわかったときは、かなりの衝撃だったね。妻の付き添いで行った病院で、まさか自分が原因だったと知らされるなんて。
「精子がゼロ」ということは子どもができないということ。全てが真っ白になったし、その先のことが考えられなくなった。男として、人間として否定されたような気持ちだったよ。相当落ち込んで、妻に「離婚して、他のパートナーを探した方が……」と伝えると、「子どもがいなくても、ユカイさんが子どもみたいなもんですから」と言われたんだ。
その後、インターネットで情報を調べると、男性不妊にはいくつかの原因があるらしかった。一筋の光を頼りに、ドクターを受診すると「閉塞性無精子症」の可能性があるとのこと。つまり、精巣で精子はつくられているのだけれど、精管に問題があって、精液に精子が届かないということらしい。この場合、睾丸を切って精子を取り出し、顕微受精するという運びになる……。
もちろん、自分の心の整理も必要だったし、妻にも負担がかかる。二人で相談し、その可能性にかけてみることにしたんだ。
顕微受精ではもちろん失敗も繰り返し、夫婦の間がぎくしゃくすることもあったよ。離婚まで考えるほど追いつめられ、でも、妻も「もう1度やってみたい」ということで最後のチャレンジ。あきらめていたけれど、47歳にして、やっと子どもを授かった。
子どもができたとわかったときは、「ワー」と喜ぶというより、心からこみ上げてくるような感覚。「本当にできたのか?」「無事に産まれてくるのか?」という気持ちだったね。
妊娠中には育児書も読んだよ。おなかに話しかけた方がいいとって言うから、ギターを弾きながら歌いかけてたよ。ロックコンサートにも連れて行ったけど、おなかが張ったみたいで。それ以来自粛したけどね。
妊娠とか、子どもが生まれるとか、もちろん初めてのことで、どうしていいかわからず。お皿洗っても割っちゃったり、やればやるほど、足手まといなことも……。せめてもと思って、断酒したんだ。それ以来、スイーツにはまっちゃったけどね(笑)。
産まれてきたとき、声がすごかったんだよ。天にも届くほど!
「これは間違いなくおれの子だ!」と思ったね。でも顔見たら、サルっぽくて、ちょっと心配になったよ。
大好きなジョンレノンは、ロックンローラーだけど、育児もするパパだった。だからおれも育児しようと思ってたんだ。
不器用だから、「なんでもできる」とはいかないけど。肌着なんて「このひもは、どこで結ぶんだ?」って、なっちゃうからね。でも、やっているうちにおむつ替えだってできるようになったよ。沐浴は完璧だよ! 沐浴キングとは俺のこと!
おれのお袋は働いてたし、親父は家事とか結構アシストしてたからね。中学のころには、おれも皿洗ってたし。だから男だって、家事や育児するのは、とても自然なこと。
でも、上の子が2歳で、下が双子だから、本当に大変。おれが家にいるときは、妻をゆっくり眠らせてあげたいと、1人で子育てすることもあるけど。
双子に両手でミルクをあげていると、上の子が背中に飛び乗ってきたりして。こっちは両手ふさがってるからね、地獄絵図のようだよ(苦笑)。おれがいないときには、これを1人でやってるなんて、「ママはすごいな~」と改めて思うね。
子どもとは、絵本を読んだり、ピアノで一緒に歌ったりしてよく遊ぶよ。絵本は1回読むと、10冊くらい読む羽目になるからね。ギターを弾くと踊り出したりして、楽しいよ。最近滑り台が大好きで。この間なんか「もう1ちゃい(回)」って、結局30回以上やらせされた。「もう帰ろう」って言っても、泣いちゃうからね。
子育ての方針は特になくて、あまり叱りすぎないようにってことくらいかな。叱るときは、理由を説明してる。歌を覚えたり、何かできたときには、「すごいね~」ってほめるようにしてるよ。でも、引き出しに何が入っているか覚えてたりして。子どもって、本当にすごいよね。
子どもは、これから大人になっていく存在。だからオレは、その架け橋になりたいと思うんだ。どこに向かったらいいか迷ったりすることもあるよね。だから、人生のスタート地点からの架け橋になりたいなと。子どもって、オレにとっては天使。無償の愛って言うけれど、本当にそう思うね。
「親の心、子知らず」でいいと思うんだよよね。親がいろいろやってあげたから、それを感じろとか感謝しろとは思わない。そこからの人生は、子ども自身のものだからね。
もちろん楽しいことばかりじゃないけどね。夫婦、家族で助け合って、楽しく明るく生きて行けたらいいんじゃないかな。
著書「タネナシ。」(講談社)。
NHKラジオ第一「すっぴん!」毎週水曜日8:00-12:50 生放送。FM NACK5 「Hello サムシング!」 毎週土曜日22:30-23:00
撮影/鈴木慶子 取材・文/高祖常子