入園が目前になってくると、「トイレトレーニングができていない…」「好き嫌いがたくさんあって…」など、子どもが園生活をきちんと送れるか、不安に思うお母さんも多いようです。
もっとも大切なことは何か。園生活をスタートするにあたっての心構えについて、櫃田紋子先生にお話を伺いました。
幼稚園・保育園は、初めてお母さんの手元を離れて子どもだけの力で集団生活をするところ。それだけに、「うちの子は大丈夫だろうか」といった不安を抱くお母さんもいるでしょう。
ひとりで脱ぎ着してボタンをとめられるか、ご飯をこぼさずに残さず食べられるだろうか、靴は左右間違っていない?などなど、心配には事欠きません。特にトイレトレーニングが完了できていないと、失敗が目に見えやすいので、不安になりますよね。
親心からつい、「ちゃんとできないと、入園してから困るよ?」「こんなこともできなくてどうするの?」などと子どもに言ってしまうという話もよく聞きます。でも、そのような言葉がけは、子どもに入園へのプレッシャーをかえって与えてしまうことになります。
では、親子ともにどのように心構えをしたらいいのでしょうか。
例えば、トイレトレーニング。これは、親子のトラブルのナンバー1でしょう。トイレトレーニングは、子どもが理解すればできるようになるというものではなく、膀胱の成長など体の準備もできていないとうまくいかないものです。体の準備ができているかを見極めるために、日頃から子どものおしっこのタイミングをみてあげる必要がありますから、お母さんにとっても手間やストレスがかかるかもしれません。でも、心と体の準備ができてはじめて成功するものですから、「入園前までにできていないといけない!」という“あせり”は捨てましょう。
何度トイレに失敗しても、お母さんがきちんとケアをしてくれる。子どもはそうしたお母さんの姿をみて、信頼を深めていきます。将来やってくる反抗期やさまざまな子どもの成長過程において、もっとも大切な信頼関係を、この時期に育んでいるのだと考えましょう。
とはいえ、おもらしの後始末も大変ですから、ついイラっとしてしまうこともあるでしょう。イラついてしまう自分に、罪悪感をもつ人もいるようですが、その必要はありません。母親業をしている誰もがこうしたイライラをもっています。
でも、ちょっとした工夫で、イライラの原因を軽減させることもできるのです。おもらしをさっと拭けるようにボロ布を用意しておく、床にカーペットを敷かずフローリングのままにするなども一つの方法です。
「入園前に○○ができていないといけない」ということは基本的にありません。どんなことも、成長と共にできるようになりますから、入園という時期に子どもをあわせるのではなく、子どもそれぞれの成長のタイミングにあわせてできるようになっていけばいいのです。
「入園までに○○をできるように」などと、園側が説明したとしても、できないと入園に支障があるということにはならないはずです。子どもの発達を伝え、個別に相談しましょう。
いずれにしろ「できなくても大丈夫」と親自身が思うことです。そして、できないことに目を向けるのではなく、できていることに目を向けましょう。
お母さん自身も、自分が子育て、家事、仕事などいろいろなことを精いっぱいこなしていることに自信をもって、自分をほめてあげましょう。
子どもの「自分でやりたい」気持ちを大切にしてあげましょう。無理のない範囲で、自分でできることを増やしてあげると、子どもが自分に自信を持つことができ、自己肯定感が育まれます。
3年保育の場合は、入園前にちょうど2歳のイヤイヤ期にあたるかもしれません。これは、子どもが「自分でやりたい」という自立心からくるものです。親からみると、子どもにやらせるよりも、手を貸した方が早くすむもの。でもそこは、時間にゆとりをもって、子どもにやらせ、「自分でできた!」という満足感を味わわせてあげましょう。
言葉への理解力も高まっている時期ですから、行動を言葉で説明してあげるのもいいでしょう。先の見通しなども同様で、「時計の針が12になったら、お片づけしようね」「明日からトイレでおしっこしてみようか? 一緒にパンツを買いに行こう」など、どんなことも前もって言葉をかけてみましょう。突然言われるよりも、意外とすんなり子どもが受け入れてくれる場合も多いようです。
自分でできたり、約束が守れたときは、たくさんほめてあげましょう。「さすが○○ちゃん。もうすぐ幼稚園、楽しみだね!」そんな一言を加えると、園生活への自信につながります。
子どもにとって、うわばきの左右は区別がつきにくいもの。そんなときは、上履きにママオリジナルの絵を描いてみましょう。左右セットで1つの絵ができあがるようにすると、そろえたときにどちらが右でどちらが左か、一目でわかるようになります。絵が下手でも大丈夫! ハートや星、チューリップなどシンプルな絵でもOKです。
保育園や幼稚園でよく取り入れられている方法に、自分のマークを決めるというのがあります。○○ちゃんはりんご、○○くんはぞうなど、自分だけのマークを作るのです。それを持ち物に付けたり、靴箱やロッカーに付けたり。これなら文字が読めなくても、自分のものがどれかわかりますね。
「自分で着替えができた」「残さず食べられた」「トイレに行けた」など、どんなこともチャレンジできたら、シールやスタンプを貼れるような表を作ってみましょう。どんどんたまっていくのがうれしくて、チャレンジ精神を一押ししてあげられます。できたか否かの結果にこだわるよりも、挑戦しようとする気持ちを大事にしてあげて。
この時期は、脱ぎ着がしやすい、機能重視の服を選びましょう。首の空き具合、ボタンの有無、絵で前後がわかるなどを、服選びのポイントにするのもいいですね。成長が早いので、大きめサイズをそろえてしまいがちですが、大きいと脱ぎ着しにくかったり、遊ぶときにも脱げやすかったりして危ないので、ジャストサイズを用意しましょう。
靴もジャストサイズを選びましょう。自分で履きやすいように、かかとにひもをつけてあげるのも、おすすめです。面テープのタイプを選ぶのもいいでしょう。年長さんなど手先が器用になってきたら、親子でひも結びの練習をしてみましょう。時間があるときに、ゆっくり見守りながら、自分で脱ぎ履きする練習をさせましょう。
イラスト/犬塚円香 取材・文/山田治奈