ポリオから子どもを守る!
不活化ポリオワクチンの接種が9月1日からスタートしています。
ポリオという病気についてと不活化ポリオワクチン接種がなぜ必要なのかについて、薗部友良先生に伺いました。
薗部友良先生
日本赤十字社医療センター小児科顧問。VPD(ワクチンで防げる病気)に対する一般の理解が薄く、ワクチンを受けないために命を落とす子どもが多いという不幸をなくそうと、「VPD を知って、子どもを守ろう。」の会を発足。著書に『育児百科』(主婦と生活社)他がある。
ポリオはポリオウイルスによる急性のウイルス感染症です。小児麻痺とも呼ばれています。ポリオウイルスに感染しても、多くの場合は、目立った症状はあらわれません。ただし、約千人に一人四肢に麻痺があらわれ、その麻痺が一生残ることがあります。
日本では今までポリオ予防に「生ワクチン」が使用されていました。生ワクチンには自然界に存在するウイルスの病原性を弱めたウイルスが入っているため、まれにポリオにかかった時と同じ症状が出て、麻痺などがあらわれることがありました。そのため、日本でも世界と同じように不活化ポリオワクチンが導入され、9月1日から定期接種がスタートしました。
この単独不活化ポリオワクチンは、ポリオウイルスが持つ毒性を無毒化(不活化)し、ポリオに対する免疫を獲得するために必要な成分だけを取り出して作ったも のです。ワクチン接種によって、ポリオにかかった時と同じように麻痺があらわれる心配はありません。主な副反応は、接種部位の赤みや腫れ、発熱などが報告されています。
厚生労働省の報告によると、ポリオワクチン接種が完了していない子どもがまだ、残念ながら存在します。一時期接種を見合わせていた子どもを含め、平成24年度秋には、約146万人がポリオワクチン接種の対象になっています。ポリオワクチンを接種したかどうかを確認し、まだ接種していない場合は、かかりつけ医に相談して、早めに接種しましょう。
日本にはポリオが発生してないのに、なぜワクチン接種が必要なのですか?
日本でポリオワクチンの接種を中止すると、再びポリオが流行する危険性があります。
日本は30年以上にわたり、自然界に存在するポリオウイルスによるポリオの発生が報告されていませんが、海外ではまだポリオが発生している国があります。海外との行き来が活発ですから、さまざまなルートからポリオが入ってくる可能性があり、ポリオワクチンの接種が必要です。
単独不活化ポリオワクチンについて教えてください。
世界で広く使われているワクチンです。
9月から接種が開始されている単独の不活化ポリオワクチンは、自然界に存在するポリオウイルス自体を無毒化した野生株由来のソークワクチンであり、日本を含む87か国で承認されています。このワクチンは、世界ですでに2億7300万本が接種されており、オランダやスウェーデンでは野生株由来の不活化ポリオワクチンだけでポリオを撲滅しました。
どんなスケジュールで受ければいいですか?
不活化ポリオワクチンの接種は、初回接種と追加接種があります。
単独の不活化ポリオワクチンの接種をする場合は、初回免疫と追加免疫があります。初回免疫は、生後3カ月から3~8週の間隔をあけて3回接種します。追加免疫は、初回免疫後6カ月以上あけて1回接種します。
取材協力/サノフィパスツール株式会社 イラスト/サカモトアキコ