ワクチン接種が流行を防ぐ
「風疹が大流行」とたびたび報道され、心配している方も多いはず。
病気の特徴、過去の予防接種の実施状況、最新動向について、国立感染症研究所の多屋馨子先生に教えていただきました。
風疹の予防接種は、現在、1歳で1回目を接種し、十分な免疫をつけるため小学校入学前に2回目を接種することになっています。
風疹は、発熱、発疹、リンパ節の腫れが特徴の病気。症状が現れるのは、感染後2〜3週間頃からですが、本人が発病に気づく前から、ウイルスは周囲に広がり始めます。
くしゃみや咳が出なくても、2m以内の距離で会話をしただけで、相手は飛沫感染します。
知らないうちにウイルスに接触してしまうことは十分あり、自己防衛は困難。唯一の対策が、予防接種です。
2012年から2013年にかけて、大流行している風疹(※1)。その感染者の9割が大人で、20~40代の男性が圧倒的です。これは、過去に中学の女子だけを予防接種の対象とした時期があり、現在30代以上の男性の多くは受ける機会がなく、風疹の免疫を持っていない人が2〜3割いるからです(コラム参照)。
子どもは風疹にかかっても、比較的軽くすむ人も多くいます。
一方、発熱や発疹が長引いたり、まれに脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症を起こすことがあります。
特に、妊娠20週までの女性が感染すると胎児に影響し、先天性風疹症候群(※2)の赤ちゃんが生まれる可能性が高くなります。風疹の予防接種は、自分の重症化を防ぐだけでなく、妊婦さんへの感染を防ぐこと、おなかの赤ちゃんを先天性風疹症候群から守ることにつながります。
子育て中のお父さんの多くが、メディア報道で現実を知り、家族を守るためにワクチン接種を受けたようですが、予防接種の制度がなかった世代を統計的に見ると、未だ数百万人に免疫がない状況です。
女性だけでなく男性も進んで予防接種を受け、男女ともに免疫をつけないことには、妊婦さんと赤ちゃんを守ることができません。
自分が子どもの頃に予防接種を受けたかわからない人、受けていても免疫が弱くなっている人は、予防接種を受けた方が安心です。
費用助成しているところもあるので、自治体や会社に問い合わせましょう。
妊娠すると、風疹の免疫があるかどうか健診で必ず調べますが、陰性もしくは数値が低かった方は、出産が終わったらなるべく早めにワクチンを接種しておきましょう。風疹は生ワクチンなので、妊娠中にワクチン接種は受けられず、接種後2カ月間は妊娠を避ける必要があります。出産後、赤ちゃんと一緒に退院する前、あるいは1カ月健診のタイミングで、お母さんもワクチン接種を受けるのがおすすめです。
お母さんが妊娠前に予防接種を受けると、それが胎盤を通して赤ちゃんへ伝わります。これを移行抗体といい、生まれながらの免疫として、赤ちゃんをその病気から守ってくれることになります。
●NIID国立感染症研究所
●「VPDを知って、子どもを守ろうの会」
※風疹のワクチン接種は、いずれの医療機関でも受けられます。かかりつけ医に相談しましょう。
※1:2013年の患者報告数は13670人(8月14日現在。国立感染症研究所感染症疫学センター集計)。
※2:妊娠初期、身体の器官が形成する時期に胎児が風疹ウイルスに感染すると、難聴、心疾患、白内障、発達の遅れなど、先天障がいを持つ可能性がある。赤ちゃんに先天性風疹症候群が100%出るわけではなく、たとえ障がいを持って生まれても治療で改善する可能性もあり、風疹に罹ったからといって、すぐに妊娠の継続をあきらめず、かかりつけの産婦人科の先生に相談を。
※この記事は2013年に取材、掲載されたものです。
予防接種・ワクチンに関する最新の情報は http://www.know-vpd.jp/ でご確認ください。
取材・文/中野洋子