子どもに合って、親もハッピーになれる視点が大事
子どもが集団生活を送る、保育園、幼稚園、認定こども園。それぞれに教育方針や保育スタイル、サービスや質などの差があります。何を基準に判断したらいいのか、園選びのポイントについて、子どもの育ちと教育に詳しい高山静子先生にお話を伺いました。
心身の成長が著しい幼児期は、生きる基盤づくりの一番大事なとき。お母さんから離れ、子どもが初めて集団生活を送る環境として、どの園に通わせるかは、とても重要です。
複数の選択肢があれば、家から一番近いなどの物理的な理由で簡単に決めてしまわず、施設や規模、教育やサービスの質などをじっくり調べて選びましょう。教育内容や保育時間、遊び方などは、園によってさまざま。そこで日中の時間を過ごす子どもの日々の体験や学び、身につく力は、通う園によってかなり違ってくることがあります。
「幼児教育は幼稚園、保育は保育園」と思われがちですが、実は幼稚園と保育園の3歳以上の教育内容は、50年以上前から共通化されています。0歳からの保育サービスと幼稚園の教育カリキュラムが受けられる認定こども園をはじめ、夕方まで延長して預り保育を行う幼稚園、教育に力を入れる保育園などが増え、また、国の「子ども子育て会議」の指針からも、幼保一体化の流れが加速しています。
また最近は、野や山、里、川など自然の中での教育と保育を重視する「森のようちえん」が、全国各地で増えてきています。経営は、私立幼稚園、認定こども園、NPO法人、自主保育のサークルなど、さまざまです。
共働き夫婦にとっては、スポーツや英語教育を取り入れた園、駅に隣接して施設がある園など、便利でサービスの充実した民間・民営の保育園が増え、選択肢の幅が広がっています。
あるいは、幼稚園の預かり時間に合わせてパートタイムに出たり、延長保育を利用して週に2〜3日だけフルタイムで仕事をするなど、働き方も工夫できる時代です。
園の教育方針をチェックするに先立って、自分はどのような子育てをしたいのか、どのように育ってほしいのか、“わが家の教育方針”を明確にしましょう。パートナーとも話し合い、共通の認識を持つことも大切です。
幼児期の子どもは、遊びを基本とするさまざまな体験を通して、気力、体力、知力が養われ、人との関わり方や思いやり、社会性などを身につけていきます。遊びが大事なことは確か。でも、単に遊ばせるのではなく、「意図を持った遊び」を組み立てているかどうかで、園の力量がわかります。
遊びが中心の園でも、子どもの好き勝手に遊ばせているのではなく、例えば秋なら、落ち葉を何かに見立てたごっこ遊び、お絵描きは落ち葉を貼り絵に、そして本棚には落ち葉が登場する絵本が並んでいるかを確認しましょう。
遊びを関連づけ、遊びが発展していくように、季節に合わせた環境を整えているかも、園を見極めるポイントになります。
ただし、子どもにとって、自分のペースで自由に遊べるのが一番かというと、そうとも限りません。ファンタジーの世界にひたるのが好きな子は、自由なごっこ遊びが楽しいでしょうが、自分で遊びを作り出すのが苦手な子は、先生の指示で造形や体操などを行う方が経験が豊かになる場合もあります。
子どもの性格や気質にあっているか、興味や関心のあることに取り組みやすい環境かどうか。それにはまず、わが子をよく知ること。そして、子どもと園との相性を見て選ぶようにするといいでしょう。
「子どもの可能性を引き出してくれるのでは?」と期待し、英語や楽器、体操や水泳など、早期教育を行っている園に関心が高い親も少なくありません。
でも、園でのレッスンで、英語が話せたり何か楽器が弾けるようになったとしても、その後も継続しなければ意味がありません。
子どもがあまり好きではないのに、園がそのような方針だったとしたら、毎日通う子どもにとって、精神的にも大きな負担となるでしょう。もし本気で何かの力を伸ばしたいなら、子どもの興味の方向を見極め、親子で楽しく取り組んだり、場合によっては外部の教室の力を借りるなどした方がベターでしょう。
どの園が子どもに最もふさわしいか、ネットやパンフレットなどの情報だけで見極めるのは難しいもの。園が開催する見学説明会に足を運びましょう。
施設や環境の様子はもちろん、子どもたちがどんな表情で遊んでいるか、先生の子どもへの接し方、言葉のかけ方も観察し、教室の本棚に並ぶ本も、季節感やテーマが感じられるかさりげなくチェックを。初めての環境で、わが子がどのような行動をとるか、目を輝かせているかどうかも見逃さないようにしましょう。
ただし、子どもの事を思って選んだ園でも、遠かったり、お母さんの出番が多すぎては疲れてしまいます。 子どもの登園が負担になっては、数年間の園生活は続かないでしょう 子どももハッピー、親もハッピーと言える、ちょうどいいバランスで判断しましょう。
●認可保育園・認証保育所
●民営の公立保育所
●幼稚園
●認定こども園
幼保連携型
認可幼稚園と認可保育所とが連携して、一体的な運営を行う。
幼稚園型
認可幼稚園が長時間の保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備える。
保育所型
認可保育所が、親の労働や疾病などの理由でなくても子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備える。
地方裁量型
幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たす。
取材・文/中野洋子