ベビーカーを押していると、おじいさんでさえも道をあけてくれたり、階段ではさっと手を貸してくれるという国。ママも当たり前のように、出産後に仕事に戻れるノルウェーの首都オスロの子育てを、miku編集部が取材してきました。
ノルウェーは、徹底した平等と個人主義の国。移民や難民も多く受け入れており、男女、民族、肌の色、言葉、宗教などによる差別や不平等をできるかぎり排除しています。大人はそれぞれが経済的に独立し、妻は夫に依存せず(納税義務も別)、子も親からできるだけ早く独立しようとする考え方があります。
こども・平等・社会省(Ministry of Children, Equality and Social Inclusion)と「平等」という名称が省名に入っているところからも、国としての意志の強さが伺えます。
ノルウェーも、20年前は父親緊急現地取材!の育休取得率は今の日本とほとんど変わりませんでした。1978年にノルウェーの男女平等法が制定され、「公的機関の委員会、執行委員会、審議会、評議員会などでは、それぞれの性が4割以上を占めなくてはならない」(数値は1988年に改正)とされました。現在、女性閣僚は全体の約半数。大企業の取締役の約4割が女性です。
1977年から父親の育児休暇制度がありましたが利用率が低く、1993年にクオータ制( 父母合わせて最大54週の育児休暇のうち、4週間は父親が取らなくてはならない)が導入されました。
現在では、出産前3週間も含め育休期間49週を選ぶと期間中は給与の100%が支給され、59週を選択すると80%が支給されます。2014年は父親が10週以上育休を取得することが条件(クオータ制)となっています。この条件は、2003年は4週、2012年は12週、2013年は14週と政権交代などで議論され、毎年改訂されています。クオータ制がスタートした1993年には2~3%しかなかった男性の育休取得率ですが、現在では約90%の取得率になっています。
妊娠出産で仕事を辞めるという人はほぼ皆無で、育休後は男性女性に限らず、同じ職場の同じポジションに戻ることができます。そのために、「子どもを保育園に必ず入れられる」「職場の働き方の柔軟性」「子どもが病気の時などに仕事を離れられる」という3つのことが保障されています。
保育園は就学前幼児教育の場という位置づけで、barnehager(英語ではKindergarten)と言われます。ノルウェーでは1年間は育児休暇が取れるので、0歳児を預かる公立の保育園はありません。社会全体が出産後の約1年間は育児休暇を取得する前提で動いています。自治体は親が保育園への入園を希望した場合、必ず用意しなくてはならないと規定されています。日本のような待機児童問題はノルウェーにはありません。
1歳~5歳児の約9割が保育園への入園を希望し、希望はすべてクリアされています。乳幼児の母親には母乳を与える権利もあります。ママが働いてパパが育休を取っている場合、ママの職場にパパが赤ちゃんを連れてきて、母乳を与えるサポートを行うことも認められています。2014年に新しい法律ができ、働くママが1歳未満の子に母乳をあげる時間が有給扱いになりました。
保育園での昼食を用意するのは親の役目で、基本的に弁当を持参します。
小規模保育ファミリエ バーネハーゲ(familiebarnehager)もあります。保育園に代わり3歳未満の幼児を小規模の人数(5名程度まで)預かるシステムで、日本にもあるような保育ママ的なものです。 自治体のレベルで認可、指導が行なわれています。
●小学校
取材・文/高祖常子