「子育て」に軸をおいて向き合おう!
この春、育休から復帰したり、新しく仕事を始めるママも多いことでしょう。子育てしながら仕事を始めるとき、どのようなことを心がけたら良いのでしょうか。また、どんな準備をしておいたら良いでしょうか。キャリアコンサルタントの上田晶美先生に聞いてみました。
上田晶美先生
早稲田大学卒。1994 年にキャリアコンサルタントとして独立し、株式会社ハナマルキャリア総合研究所(http://www.hanamaru-souken.com/)を設立。オフィスでママ向けの無料電話相談も行っている。『ママも今日から働くワ!』(日本経済新聞出版社)など著書多数。3 児の母。
春から育休明けで職場に復帰したり、新しく仕事を始めるママは、これまでの生活サイクルががらりと変わり、慌ただしい毎日を過ごしていることでしょう。仕事と育児の両立をめざしてがんばり始めたママたちに、心にとめておいてもらいたいことがふたつあります。ひとつめは、どんな時でも「子どもがいちばん大切」ということを頭に入れておくこと。与えられた仕事に責任を持ち、最後までやりとげることはもちろん大切ですが、仕事を優先しすぎて子どものことをおざなりにしてしまったり、ママ自身が無理しすぎて体調をくずしてしまったりすると、その負担が全部ママにのしかかり、ママも子どももつらくなるばかり。子どもがまだ小さいこの時期は、子どもを主軸において仕事と向き合ってほしいですね。
ふたつめは、実際に仕事を始めてみて仕事と育児の両立が困難だと感じたら、仕事量を減らす、仕事時間を短くする、仕事日を減らす、場合によっては仕事を変えたり、辞めるなど〝勇気ある撤退〟を決断してもよいということ。仕事量を減らしてもらったり仕事を辞めたりしても、子どもをいちばんに考えた上での選択なので自分のキャリアの汚点にはなりませんし、後でやり直しがきくものです。自分を責めず、職場の同僚や上司にはきちんとおわびの気持ちを伝え、「この借りはまたいつかどこかで返そう」と気持ちを切り替えることも大切です。
子どもは小学校低学年くらいまでは、なにかと手がかかるものです。出産後もフルタイムで働くという考え方もありますが、一旦仕事から離れて仕事復帰を考えるママは、まずは短時間のパート勤務から始め、自分なりに仕事と生活の感触をつかみながら、子どもの成長に沿って仕事のウエイトを少しずつ増やしていく……という〝クレシェンド〟な働き方をおすすめします。5年後、10年後の〝働く自分〟を想像しながら、乳幼児を育てている今は「目標に向かって足場を築く時期」と考えるとよいでしょう。
夫は家事全般が苦手です。何から分担してもらったらいい?
機械が好きな男性も多いので、掃除機、洗濯機、食器洗い機など家電を使った家事から分担してもらうようにするとよいでしょう。必要に応じて、パパが使いやすそうな時短家電を買いに行くところから始めてみましょう。自分で購入した家電なら、パパ自身も楽しみながら家事をこなせるようになるかも。
仕事が長引いて園のお迎えに遅れそう。ママ友に子どもを預かってもらってもいい?
基本的にはベビーシッターさんやファミリーサポートなどに頼むのがよいと思いますが、困った時にお互いに預け合えるような関係のママ友が近所にいるのなら、頼んでもいいでしょう。その場合は、あとで何らかのお礼をするなど、ご近所づきあいの最低限のマナーを心がけて。
近所のおじいちゃんおばあちゃんを頼っていい?
当面サポートが必要ない場合でも、「何かのときにご協力をお願いできますか?」と伝えておきましょう。サポートを期待している場合も、「子どもが病気のときに、見ていただくことはできますか?」など、具体的に相談しましょう。祖父母にも自分たちの生活がありますから、それぞれの生活を尊重しつつ、サポートしてもらえた感謝を忘れないことが大切です。
仕事がスタートすると、これまでママがやってきた育児や家事を同じようにこなすのは物理的に難しくなってきます。パパに、ママが仕事を始めることで家計収入がアップすることをきちんと伝え、育児と家事に主体的に参加してもらいましょう。育児では子どもをお風呂に入れる、家事では掃除機をかけてもらう……など、最初はパパが比較的得意な分野からお願いするとよいですね。「やり方が違う」などと責めたりすると、パパはやる気をなくしてしまいます。お互いを尊重し、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えましょう。
子どもにも仕事を始めることを伝えましょう。2~3歳くらいなら「朝はママもお仕事の準備で忙しくなるから、ひとりでおしたくできるように練習しよう」と、自分で身支度ができるような働きかけもおすすめです。食パンを焼く、食器を運ぶなど、朝の家事の簡単な手伝いをお願いするのもよいでしょう。
子どもが体調をくずした時の対策も事前に練っておくことが大切です。パパと緊急時の役割分担などを話し合っておくのに加え、突然お迎えに行かなくてはならない場合も想定し、ベビーシッターさんやファミリーサポート、一時預かり、病児保育の施設などを調べていつでも頼めるようにしておきましょう。仕事を始める2週間くらい前に、1日の生活の流れがどうなるのか、家族で実際にシミュレーションしておくのもいいですね。
小さい子どもはとかく体調をくずしやすいもの。常に「明日急に仕事を休むことになるかも」という心づもりで、職場の同僚や上司には、常日頃から自分の仕事の進捗状況をオープンに伝える努力をし、子どもが体調をくずし始めた時には「子どもが風邪をひいてしまっていて、もしかしたら明日休むかもしれません」などと職場と密にコミュニケーションをとることを心がけましょう。
子どもが熱を出して仕事を休まなくてはいけなくなったときは、気持ちをリセットして、ゆったりとした気持ちで子どもに付き添ってあげて。「あなたのせいでママはお仕事休まないといけなくなっちゃったのよ!」などと、責めるような言葉は子どもを傷つけてしまうのでNG です。
子育てしながら仕事をすることは想像以上に大変ですが、仕事と家庭の二つがあることでスイッチの切り替えができ、毎日の生活だけでなく自分自身にもメリハリがつくものです。少し行き詰まったときは、先輩のワーキングママに相談してみるのもいいでしょう。
児童館や子育てひろばのスタッフに話してみたり、自治体の家庭支援センターなどでも働くママからの相談に応じています。託児つきで働くママ向けの講座を行っている自治体もあります。周囲の助けを借りつつ、子どもとの時間も楽しみながら、笑顔で仕事を続けられるバランスを見つけられるといいですね。
◎ベビーシッター
幼稚園・保育園の送り迎えや病院の送り迎えなど、子どものさまざまな面倒をみてもらえるサービス。民間の場合は、団体や企業概要を確認しよう。
◎ファミリーサポート
地域において育児や介護の援助を受けたい人と行いたい人が会員となり、育児や介護について助け合う会員組織。
http://www.jaaww.or.jp/service/family_support/
◎一時預かり
さまざまな理由により家庭の保育ができなくなった時に一時的に子どもを預かるサービス。自治体や保育園等で行っている。
◎病児保育施設
病気やケガなどで通園、通学できない子どもを保育士や看護師などの専門スタッフが一時的に預かるサービス。自治体や病院などで実施。
イラスト/犬塚円香 取材・文/長島ともこ