「朝」と「夜」を知らせることからスタート
赤ちゃんの生活リズムは、いつごろからどのように整えればいいのでしょうか。また、多くママを悩ませる夜泣きは、生活リズムや睡眠と何か関係があるのでしょうか。小児科医の内海裕美先生にお話を伺いました。
内海裕美先生
吉村小児科(東京都文京区)院長。日本小児科学会認定医。医学博士。日本小児科医会子どもの心相談医。地域のお母さんを対象に子育て支援セミナーや読み聞かせなども開催し、医院の待合室にはたくさんの絵本が並ぶ。
産まれたばかりの赤ちゃんは、昼夜関係なく寝て、飲んで、おしっこやうんちをして……の繰り返し。生後3~4カ月くらいになると授乳の間隔が少しずつ長くなり、「午前中と午後に1回ずつ昼寝をする」など、授乳や睡眠のリズムが整ってきます。
「生活リズムを整える」といっても赤ちゃんによってサイクルが違うので堅苦しく考える必要はありませんが、大前提として、①朝の6時半~7時くらいになったらカーテンを開けて太陽の光を入れる、②夜は8時〜9時になったら寝室の明かりを暗くして、眠りやすい環境をつくる。……この2つを意識して過ごすといいでしょう。
首がすわるようになってきたら、午前中と午後に1回ずつ、抱っこやベビーカーでお散歩に連れ出してあげるといいですね。この時期の赤ちゃんは、外に出ることで五感を養い、たくさんの刺激を受けています。まだ歩けない赤ちゃんでも、外に出ることで大人が思う以上に体力を使い、眠りにつきやすくなりますし、ママの気分転換にもなります。ただし、昼寝から起きるのが夕方になってしまうと夜寝る時間が後ろにずれてしまう傾向があります。3時頃から3時半頃には起こすつもりで、お昼寝させる時間を決めましょう。
この時期は、夜起きておっぱいをほしがることもありますが、ママが苦痛でなければ夜間、授乳すると落ち着きます。ちょこちょこ起こされて大変と感じる場合は、小児科に相談しましょう。
離乳食が始まったら、食事を一定の時間に決めることで生活リズムが整ってきます。赤ちゃんのペースをつかむためにも、まずは1週間同じリズムで試して様子を見ていくと、よく食べる時間帯が見つかるものです。はいはいやつかまり立ち、つたい歩きが始まったら、赤ちゃんが自分で自由に体を動かすことができる空間と時間を意識してつくってあげましょう。たくさん遊び、体を動かすことで、夜まとめて眠るようになってきます。
基本の考え方は、赤ちゃんの生活サイクルを観察しながら、「ママ主導で1日の過ごし方の基本パターンを決める」こと。そのサイクルに赤ちゃんを誘い込んでみましょう。うまくいかない場合は、1日のスケジュールを具体的に紙に書き出してみて、問題点がどこにあるかを客観的に考えてみましょう。買い物の時間や散歩のコースを少し変えることで、これまでよりもスムーズに毎日を過ごすことができるようになることもあります。
赤ちゃんの生活リズムの立て方5つのポイント
1.朝は太陽の光を入れる、夜は眠りやすい環境にする
2.昼寝はなるべく3時半以降にさせない
3.午前と午後1回ずつ外出する機会をつくる
4.離乳食の時間を決め、1週間単位で考える
5.動くようになったら外遊びなどで体を動かす
生活リズムの整え方とともに、この時期の赤ちゃんのママからよく聞かれる悩みといえば、夜泣きや寝ぐずり。夜中に起きて泣かれたり、寝起きにぐずぐずされたりするとママは本当に困ってしまいますね。よく寝る、あまり寝ないなど眠りのパターンや、夜泣きや寝ぐずりをする、しないは、赤ちゃんの個性かも。ママを困らせるために泣いたりぐずるのではありません。
人間は、夜の間に浅い眠りと深い眠りを何度も繰り返しますが、赤ちゃんはまだその睡眠サイクルが未熟なため浅い眠りの時に目が覚め、それが夜泣きにつながるともいわれています。すべての赤ちゃんに効く〝夜泣きの特効薬〟は残念ながらありませんが、おっぱいをあげて泣き止むのならそれでOK ですし、車に乗せてドライブに行くと落ち着くのならそれもOK。ママとパパで協力しながら、〝わが家なりの夜泣き対策〟をいくつかもっていると安心ですね。
夜泣きが続くとママも睡眠不足になり、イライラしてしまいがちですが、大切なのは、ひとりでかかえこまないこと。
パパやおじいちゃんおばあちゃんなど家族の助けを借りたり、地域の子育てひろばに足を運んで相談したりなど、自分が困っていることを周りの人たちに伝えることが大切です。つらければ、小児科に相談すると、夜泣きを落ち着かせる漢方薬を処方してくれることもあります。
睡眠不足が続くと、ママも疲れがたまって、元気がなくなってしまうかもしれません。家事が少々手抜きになっても睡眠時間を確保することのほうが大切です。昼間は赤ちゃんと一緒に昼寝したり、パパが休みの時に赤ちゃんを見てもらってその間にゆっくり眠ったり、リフレッシュして休息をとりましょう。
夜泣きが始まる月齢や続く期間、時間帯などは赤ちゃんによってまちまちですが、多かれ少なかれ成長段階でだれもが通る道であり、多くの赤ちゃんは、1歳半くらいになるとだいぶ落ち着いてくるものです。大変なことも多いと思いますがひとりでがんばりすぎず、「そのうちおさまるわ」と肩の力を抜いて、乗り切っていきましょう。
寝かせるつもりはなかったのに夕方寝てしまった。どうすればいいの?
夕方の時間帯に昼寝してしまっても、夜9時くらいには部屋の明かりを暗くして寝る体制を整えましょう。結果的に夜更かししても、次の日の朝起きる時間を後ろにずらさないようにすれば、リズムがくずれる心配はありません。夕方眠そうにしていたら、先にお風呂に入れて夜7時ごろ、早めの時間に寝かせるのもよいでしょう。
夜中に泣いておきて、離乳食を食べたがります。あげてもいいの?
夜泣きの時期は、イライラや疲れをためないためにもさまざまな手段で〝乗り切る〟ことが大切です。「夜中に食べさせたら食事のリズムがくるってしまうかしら」と心配するママもいるようですが、離乳食をあげることで夜泣きがおさまり、寝てくれるのであればあげてかまいません。習慣化させないよう注意しながら様子を見ていきましょう。
昼寝のあとの寝ぐずりがひどくて困ってしまいます。
赤ちゃんの寝ぐずりの姿を見て親がイライラすると、そのイライラが赤ちゃんに伝わり悪循環に。こんな時は、お互いの気分を変えるためにも、近所の子育てひろばに出かけたり、お散歩や買い物に行くなど、〝外に出かける〟ことをおすすめします。
上にきょうだいがいると赤ちゃんの生活リズムがたてにくい。どうすればいい?
上の子が通園してある程度生活習慣ができていれば、「上の子の生活リズムの合間に何ができるか」という発想でリズムをつくってあげるとよいでしょう。上の子が園に行っている間に下の子の離乳食を食べさせるなどもいいですね。1週間ためしてみてうまくいかなかったら、その都度軌道修正を。
激しい夜泣きを近所の方から虐待と疑われて児童相談所に通報され、傷つきました。
近所の人が赤ちゃんとママを心配してくれたからこその通報です。悲観的にならず、「近所の人が気にかけてくれているのだな」と前向きにとらえましょう。児童相談所や子育て支援センターの方が、子育てサポートの情報提供をしてくれたり相談にのってくれる機会にもなります。困っていることがあったら堂々と助けてもらいましょう。
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/長島ともこ