知っていれば損をしないで節約に
妊娠・出産・子育ては、何かとお金がかかるもの。でも、国や自治体からの子育て支援として、もらえる給付金や助成金がいろいろあります。申請に関する注意点、賢く受け取るためのポイントを、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに教えていただきました。
畠中雅子さん
ファイナンシャルプランナー。「子どもにかけるお金を考える会」を主宰。「教育資金作り」「生活設計アドバイス」などを得意分野としており、新聞、雑誌、WEB での執筆活動をはじめ、講演会、相談業務など多方面で活躍。主な著書は『子育てで破産しないためのお金の本』(廣済堂出版)、『教育貧民』(宝島社)ほか。3児の母。
妊娠・出産・育児にかかる費用の公的補助が年々充実しています。妊娠の経過を見守る大事な健診費用をカバーしてくれる『妊婦健診助成』は、受診票を使うと基本項目の検査が無料で受けられます(※1)。
現在、すべての地域で最低14回の補助が受けられ、金額や内容は自治体によって様々です。
別の都道府県で里帰り出産する場合、受診票は使えませんが、捨てずに保管を。出産後、住まいのある自治体へ妊婦健診の領収書と一緒に提出すると、自治体が助成している金額が戻ってくるからです。
出産に関する費用を補ってくれるのが『出産育児一時金』。1人あたり42万円が健康保険から支給され、健康保険組合などの加入者は上乗せして支給される場合があります。
退職して半年以内であれば自分が加入していた健康保険からの支給も選択できます。勤務先や自治体の窓口へ確認しましょう。
出産する医療機関のほとんどで「直接支払制度」が利用できます。出産育児一時金が医療機関へ直に支給され、かかった費用との差額分の支払いで済みます。帝王切開での出産は健康保険の対象(3割負担)なので、分娩費用が抑えられ、お金が戻ってくることも。出産予定の医療機関に問い合せましょう。
働くママが休職中に受け取れるお金があります。健康保険から『出産手当金』が、原則98日分支給されます。ただし受け取れるまでには、産休に入ってから4カ月程かかります。その間、無給になるので、計画的に準備しておきましょう。産休中と育休中は社会保険料が免除され、家計は助かります。
雇用保険加入者で育児休業を取得した場合は、『育児休業給付金』が子どもの1歳の誕生日の前々日まで支給(※2)されます。育休明けても保育所に入れず、仕事に就けない場合など、1歳半まで延長が可能です。ただし1歳を迎える前の申請が条件。パパが育休をとる場合も、まったく同じ条件で支給されます。
生まれた翌月からもらえるのが『児童手当』です。月の後半に生まれた場合も、誕生日の翌日から15日以内に申請すれば、翌月分から受け取れます。申請が遅れると1カ月分もらい損ねますので、早めに申請しましょう。
自治体が取り決めている助成内容をよく調べ、賢くお金を受けとりましょう。
※1 妊娠は病気ではないため保険の対象外で全額負担。妊娠中に異常が見つかり、治療が必要になった場合は保険の対象となり、医療費は3割負担。
※2 父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月までの間に、1年間育児休業を取得することが可能(パパ・ママ育休プラス)。
出産・育児でサポートされるお金
「出産育児一時金」「出産手当金」は健康保険から、「育児休業給付金」は雇用保険から支給される。派遣やパートでも、雇用保険に1 年以上加入しているなど、条件を満たせばもらえる。
●妊婦健診の助成金
最低14 回の妊婦健診に助成され、金額や条件は自治体により異なる。
●出産育児一時金
1人あたり42 万円(健康保険組合は47 万円など)を支給。
医療機関の分娩費が高く、上乗せしている自治体もある。
●出産手当金
出産日前42 日と出産日翌日から56 日まで、産休前の日給の3分の2が支給される。98日間は確定ではなく出産日によって前後する。
●育児給付金
育休に入って180 日間は日給の3分の2、181 日目からは2分の1が、1歳の誕生日前々日まで支給される。1歳半まで延長が可能(事前申請が必要)
●児童手当
年収と子どもの年齢に応じて毎月5000 〜15000 円が、0歳〜15 歳まで支給される。
イラスト/犬塚円香 取材・文/中野洋子