きょうだいげんか、友だちとのケンカ>
家にいる時間が長い夏は、きょうだいげんかが多くなってくる季節。 また、園生活や子育てひろばなどで慣れてきて、どう関わればいいか、子どもの発達心理に詳しい廣瀬聡弥先生に伺いました。
廣瀬聡弥先生
奈良教育大学学校教育講座教授。博士(人間科学)。保育所や幼稚園で観察を行い、幼児の遊びと仲間関係、保育者の熟達化などに関する研究を行う。子ども理解の視点から、保育・教育に関する理論を検討し実践している。
親は困ったことだと思いがちですが、子どもにとってケンカは「学びのチャンス」です。ケンカすることによって相手の気持ちがわかり、自分の気持ちをコントロールできるようになるからです。保育や幼児教育の現場では、近年、取っ組み合いの遊びが見直されているほどです。とはいえ、実際わが子がケンカばかりするとイライラしたり心配になるものです。大切なのは、「子どもの心の発達段階」を理解することです。
●子どもの発達に合わせた言葉がけの例
1歳頃まで | 「ダメよ」「やめなさい」とシンプルに |
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2歳頃~ | 「どうしたかったの?」 「相手のものは取ってはダメよ」 |
3歳頃~ | 「自分が取られたらどんな気持ちになる?」 |
4・5歳頃~ | 「相手の気持ちを考えてみなさい」 |
0歳児は、他者との関係が成立していないので、ケンカらしいケンカが起こりません。1、2歳で周りとの関係が生まれるころからケンカが発生し始めますが、この頃はケンカの原因がはっきりせず、感情的なやりとりがほとんどです。幼児期になるとケンカの原因がはっきりしてきます。
幼児期のケンカの原因の1位は、「物の所有」です。自分が遊んでいたものを取られた、というもの。次に「場所の占有」。ここは私が使っていた場所というものです。
「自己制御」と言いますが、子どもは自分の主張を抑制する力が未熟です。そのため、主張がぶつかり合ってトラブルになります。3、4歳頃になると徐々に「自分の考えていることと、相手の考えていることは違う」とわかる力が身についてきます。これは他者とのかかわりあいの中で身につくもので、幼児の心の発達の中で最も大切なポイントです。
子どものケンカに対応するときは、きょうだいでも友だちでも基本は同じです。
・ジャッジはしない
・ケンカを禁止しない
・両方悪いと決めつけない
親は裁判官になるのではなく、聞き役に徹する。「どうしたかったの?」「何をしたかったの?」とプロセスを聞きましょう。プロセスを聞く際は、子どもが理解しやすいように、発達の段階に沿った言葉がけをしましょう。
乳幼児期の子ども同士のトラブルは決して悪いことではありません。親にできることは見守ることと、危険があったら止めること。そして、落ち着いたらしっかり話を聞くことです。そんなかかわりの繰り返しが親子の肯定的な関係を作り、肯定的な関係ができると、子どものケンカも減っていくでしょう。
きょうだいげんかは止めるべき?
危険でない限り、すぐに止める必要はないでしょう。子どもには自分たちで解決する力があり、いつの間にか仲直りをしていることもよくあります。長引くときは、止めに入るより、「おやつにしよう」など「休止」させるのがおすすめ。興奮が収まったころに双方の思いを聞いてみましょう。意外と、「そんなことで?!」というような面白い答えが出てくるかもしれません。
お友だちを噛んだり引っ掻いたりします。
言葉の発達が未熟なうちは、噛んだ噛まれたのトラブルはよくあります。いつまでも噛み続ける子はいません。園であった場合は、まずは先生とよく相談しましょう。子どもには、「ダメ!」の後に「何をしたかったの?」と聞き、「そういう時はこうしようね」と代わりの言葉や行動を、根気よく伝えていきましょう。
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/さわらぎ寛子