接種スケジュールはオーダーメイドが安心>
病気に対する免疫をつける目的の予防接種。いくつも種類があるけれど、どういう順番で受けたらいいの?任意の予防接種も受けるべきなの?など、さまざまな疑問を持つ方も少なくないでしょう。知っておきたい予防接種の基本を、小児科医の松永貞一先生に教えていただきました。
松永貞一先生
永寿堂医院(東京都葛飾区)院長。日本小児科学会認定医、日本感染症学会感染症認定医。両親の病歴や子どもの生活環境を知った上で、オーダーメイドの予防接種スケジュールを作成するなど、地域に根ざしたかかりつけ医として、子どもと家族の健康を見守ってくれる心強いドクター。
●日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール (クリックするとPDF表示します)
(2014年10月1日版 ※予防接種法等に基づき、編集部にて一部加筆。)
※予防接種の内容やスケジュールの最新情報は、国立感染症研究所「予防接種情報」を確認しましょう。 http://www.nih.go.jp/niid/ja/vaccine-j.html
赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいる間に、病気に対する抵抗力(免疫)をプレゼントされて生まれてきます。でも成長するにつれて、その免疫は失われてしまいます。
そこで、感染症の原因となるウイルスや細菌などの毒素の力を弱めて作ったワクチンを体に接種し、赤ちゃん自身で病気に対する免疫を作る働きをするのが予防接種です。
0歳で受ける予防接種が多いのは、病気に感染する前に早く抵抗力をつける必要があるため。無料で受ける定期接種と自費で受ける任意接種がありますが、どちらも重要です。
ハイハイで動き始めた赤ちゃんは、何でも手で触れたり口に入れるようになり、病原菌に感染するリスクが高まります。抵抗力が弱いため、感染すると短時間で重症化しやすく、肺炎や脳炎などの合併症を引き起こして命に関わることもあります。
ワクチン接種によって免疫ができていると、万一かかっても重症化を防ぐことができます。中には確実な治療法がない病気もあり、予防接種が命や健康を守る上で有効です。
保育園や幼稚園などに通う子どもは、集団感染のリスクが高いと言えます。我が子はもちろん、他のお子さんを守るためにも予防接種を受けておくことが大切です。
予防接種法に基づき、自治体(市区町村)が予防接種を実施しています。ワクチンは、接種する年齢や回数、次の接種までの間隔などが定められています。接種可能な時期が来たら、早いタイミングで予防接種を受けましょう。
予防接種の変更点などを確認しよう!
B型肝炎が定期予防接種に
2016年10月より、B型肝炎が定期接種に仲間入り。B型肝炎は、ウイルスを含んだ血液、体液(汗や涙)を介して感染します。保育所などの集団生活で、直に接触する機会が多い赤ちゃんは、うつるリスクが高くなります。
感染すると1~6カ月の潜伏期の後、発熱、全身倦怠感、嘔吐、腹痛、さらに黄疸が現れます。まれに命にかかわる劇症肝炎を起こすことや、慢性化すると長い年月を経て肝硬変、肝癌を発症することがあります。
感染後ウイルスが排泄されず、肝臓にすみついている状態を「キャリア」と言います。子どもは感染するとキャリア化しやすく、症状が出にくいため、血液検査をしないとわかりません。B型肝炎ワクチンの接種で、赤ちゃんのうちにしっかり予防することが大切です。
妊娠中の母親がキャリアの場合、分娩時に赤ちゃんへ感染する(垂直感染)ことがありますが、出産直後に赤ちゃんにB型肝炎ワクチンを接種することでほぼ予防できます。
接種スケジュール
標準
①2カ月②3カ月③6~7カ月
母子感染予防
①生直後②1カ月③6カ月
[対象]
2016年4月1日以降生まれの0歳児。
※2016年3月以前に生まれている場合、任意で1~2回接種している場合などはかかりつけ医に相談を。
※B型肝炎に関する情報は、内海裕美先生(東京都文京区・吉村小児科院長)
日本脳炎は生後6カ月から接種可能
日本脳炎ウイルスを保有する蚊にさされることで感染する日本脳炎。現在、患者数の報告は非常に少ないですが、日本脳炎ウイルスは西日本を中心に広い地域で確認されています。
現在、日本脳炎の定期接種は、標準的な接種開始の初回が3歳となっています。しかし、国内で日本脳炎に3歳未満で感染した報告が数例あり、生後11カ月で日本脳炎にかかったケースも報告されています。
特に、日本脳炎が発生した地域に住む子ども、日本脳炎の流行している地域に旅行・渡航予定がある子どもは、感染のリスクが高くなるため、日本小児科学会は生後6カ月から日本脳炎ワクチンの接種を始めるよう進めています。かかりつけ医に相談しましょう。
接種スケジュール
①②6カ月(6日~28日の間隔で接種)
③1歳(②から6カ月以上開ける)④9-12歳
2歳までに接種しておきたいワクチンが複数あります。2016年10月、B型肝炎が定期接種に加わりました。ヒブ、小児用肺炎球菌、ロタウイルスなどのワクチン接種をどの順番で受けたらいいか、迷うお母さんは多いでしょう。
一般に、流行している病気、重症化しやすい病気の予防接種を優先します。また、家族に病歴がある、海外渡航の機会が多いなど、生活環境によって子どもが病気にかかるリスクは違ってきます。
早めにかかりつけ医と相談の上、オーダーメイドの接種スケジュールを計画しましょう。ワクチンは同時接種が可能です。1度の来院で複数の接種ができ、赤ちゃんとお母さんの負担が軽減されます。
最近は外国人観光客が多く、レジャー施設などで、思いがけず海外からの病原菌に感染しないとも限りません。旅行やレジャーの予定があれば、ワクチン接種を済ませておきましょう。
予防接種は、体調の良いときに受けるのが原則です。平熱であっても、接種後に発熱する場合もあります。夜になって熱が出て、救急に駆け込むことは避けたいもの。できるだけ平日の午前中に予防接種を受け、体調変化があれば午後に再受診しましょう。
体温の変動が、体調の目安になります。接種する当日だけでなく、2~3日前から体温を測って上昇傾向が見られたら、接種は見送る方が無難です。受ける予定の日に、普段と違って機嫌が悪い、熱が上がり気味など、様子に変化があれば医師に正直に伝えましょう。
複数の接種が必要なワクチンの場合、1回受けて2回目以後は受けないというのでは、抗体が不十分です。子どもの健康を守るために、予防接種の重要性を理解して、きちんと受けるようにしましょう。
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子