わかるとうれしい!親子で楽しい!
まだ言葉を話せない赤ちゃんも、いろんなしぐさで思いを伝えています。なんでそんなことをしているの?と思えるしぐさにも、一つ一つ意味があります。それがわかれば子育てはもっと楽しくなります。赤ちゃんのしぐさについて、乳幼児の発達心理に詳しい白石正久先生に伺いました。
白石正久先生
龍谷大学社会学部現代福祉学科教授。乳幼児の発達心理と保育・教育、発達障害の支援などが専門。著書は、『発達の扉』(かもがわ出版)、『やわらかい自我のつぼみ』(全障研出版部)など多数。
生後間もない赤ちゃんに見られる反射を原始反射といいます。手のひらに大人の指などを入れるとギュッと握り返したり、口元の何かにちゅぱちゅぱと吸い付いたり、大きな音にビクッとしたり。生まれたばかりの赤ちゃんにもいろんな力が備わっていることに驚きます。これらは赤ちゃんが生きていくために必要な行動です。
新生児期の赤ちゃんが笑っているように見える(新生児微笑)ことがあります。生理的なものと考えられていますが、親や周りの人が「気持ちいいんだね、楽しいね」と声をかけ、受け止めることで、コミュニケーションの基礎が作られます。
1~2カ月ごろの赤ちゃんは、首の向いたほうの手足が伸び、反対の手足が曲がるあおむけ姿勢になっていることが多く、むき癖もよく見られます。反対側から声をかけ、向きが変わるよう促してみましょう。
2~3カ月ごろになると、じっと手を見つめるようになります。これは、手の存在に気付いたから。やがて両手を握ったり、手で足を持って遊ぶようになります。手足の感覚を楽しんで、興味を広げていきます。
4カ月ぐらいになると、泣き方にも笑い方にも根拠が出てきます。何かを訴えるように泣いたり、大好きな人に自分から微笑みかけるようになります。やがて喜怒哀楽の感情が育つとともに不安感情も出てきます。
ハイハイするようになると、初めての人、もの、場所に対する不安を感じ、ママの抱っこから離れなかったり、後追いをするようになります。寄り添ってくれる人とあまり知らない人の「違い」がわかるようになったのです。「人見知りの強い子になったらどうしよう」と思う必要はありません。よく知らないものへの「不安」の裏には、はじめての人やものに対する「興味」があります。子どもの不安な気持ちを受け止めて「大丈夫だよ」と伝えましょう。
おもちゃをなんでも口に入れます。止めたほうが良いでしょうか?
お座りの時期からは右手と左手を上手に使えるようになり、手にしたものを口に入れるようになります。口で物の感触を確かめているのです。危険なものや細かいものなどは片づけ、赤ちゃんには自由に探索させましょう。
指しゃぶりが気になります。やめさせるべき?
新生児の指しゃぶりは原始反射の一つ。口に触れたものに吸い付くことで無意識に母乳やミルクを飲む練習をしているのです。1歳ごろまでは、手や足の指を口に入れてしゃぶる様子が見られます。指もおもちゃと同じで、口で物の形や感触を確かめているのです。
指しゃぶりは無理にやめさせようとしないこと。自然となくなっていくので大丈夫です。幼児になってからの指しゃぶりは、不安な気持ちの拠りどころになっていることも。気になるときは禁止するよりも、「あっちで遊ぼう」と他のことに気持ちを切り替えてあげるとよいでしょう。
どんなに小さな赤ちゃんも、その子なりの反応を見せてくれます。赤ちゃんのしぐさを「受け止める」、そして「一緒にやってみること」が大切です。例えば寝返り前の赤ちゃんと一緒に腹ばいになってみる。目線を合わせて一緒に楽しんでくれる人がいるから、子どもは自分でがんばろうと思えるのです。
何カ月ごろというのはあくまでも目安。この時期の発達には個人差があります。「○カ月だから○○」ということではなく、発達の大まかな流れと仕組みを知り、その時期しか見せない赤ちゃんの愛らしいしぐさを受け止め、関わり合うこと。その繰り返しの中で、パパやママも親としての自信が少しずつ育まれていくと思います。
イラスト/犬塚円香 取材・文/さわらぎ寛子