「食べるって楽しい!」を伝えよう
特に新米ママ、パパにとって、初めての離乳食は、期待と不安の連続です。そもそも離乳食にはどんな意味があるのでしょうか?進め方や与え方のポイントは? 離乳食の基本について、管理栄養士の太田百合子先生に伺いました。
太田百合子先生
管理栄養士。「こどもの城」小児保健クリニックを経て、現在は大学などの非常勤講師、講習会講師、子育て番組出演や育児雑誌の監修などを務める。『やさしくわかる月齢別 離乳食のきほん事典』(西東社)をはじめ、乳幼児の食に関する著書も多数。
母乳やミルクで栄養をとっていた赤ちゃんも、成長にともない大人と同じように、毎日の食事から栄養をとるようになっていきます。そのプロセスの中で用意する食事が、離乳食。離乳食の目的には、赤ちゃんへの栄養補給、噛む力を育てる、さまざまな食べ物を口にすることで内臓機能を発達させる……などがありますが、いちばん大切なのは、“食べる楽しさを伝えること”です。
私たちの命を支える毎日の食事。大好きな家族と一緒に食べ物を口にするその時間の積み重ねがまさに、“生きる”ことにつながります。栄養バランスに神経質になったり、ほかの赤ちゃんと比べたりすることはありません。離乳食を通して、ママやパパから赤ちゃんに「おいしいよ!」「食べるって楽しいね!」と、“生きる喜び”を伝えることがいちばんです。
離乳食は、赤ちゃんの体と心の発達に合わせ、食べ物や食べさせ方を変えていきます。厚生労働省の「離乳食の進め方の目安」(下図参照)を基本に進めていきますが、この時期の赤ちゃんの食べる、食べないは、食べ物の舌ざわりによるものがほとんど。食べた物を口からべっと出すことがありますが、それは、「おいしくないから」ではなく「固すぎるから」という場合が多いものです。「どうして食べないの?」とイライラせず、「かたかったかな?」と、スプーンでつぶしたり、汁物を足したり、あんかけにするなどやわらかくしてからあげてみましょう。
反対に、丸のみすることが多い場合は、ちょっと固めにしましょう。そしゃくの様子や歯のはえ具合を観察し、赤ちゃんにとっての“適度な舌ざわり”の食べ物を、試しながら与えることが大切です。
生後9~11カ月頃になると、手づかみ食べや遊び食べが始まりますが、これは、手先が発達し、「自分で食べたい」という意欲のあらわれ。こぼしたり、多少の遊び食べも大めに見ながら「自分で食べられたね」と声をかけたり、時間を区切ってごちそうさまをするなどの対応を心がけましょう。
たくさん食べて欲しくてついつい肩に力が入ってしまいがちになる離乳食ですが、その進み具合は赤ちゃんによってさまざま。小食でも、遊び食べでも、体重が少しずつ増え機嫌よく遊べていれば心配ありません。「今日食べなかったら明日食べるかな」くらいのおおらかさで、この時期だけの離乳食タイムを親子で楽しみましょう。
イラスト/犬塚円香 取材・文/長島ともこ