お笑い番組やバラエティで見せる笑顔とは違って、子育て中のママとしての悩みや不安もブログなどで発信。等身大の子育ての様子に共感が集まっています。
虻川美穂子さん
お笑いタレント。お笑いコンビ北陽のボケ担当。愛称は虻ちゃん。相方は伊藤さおりさん。1歳9カ月の男の子のママ。
カッコつけて言うと、子どもは神様からのプレゼント。自分のいろいろなことに対する感覚ががらっと変わりました。
今のタイミングで私たちのところに来てくれたことに、感謝しています。
妊娠がわかったときは年齢も年齢だったので、「やった~」というより、「よし来た!」という感じでした。もともと子どもは得意な方ではなかったし、母性もない。でも子どもは欲しかったので、何もかもスタート地点という感じでした。
つわりもありました。二日酔いの延長みたい。吐いたりはしませんでしたが、スイカばっかり食べていました。つわりが終わったら「スイミングしたり歩くといいよ」と言われたけれど、逆子だったからか胃が突き上げられる感じ。ずっと食欲がなく、活動的に過ごせませんでした。せめて歩いた方がいいと思って歩いていましたが、「逆子の時には歩かない方がいいよ」って言う人もいて。ほんと、どうしていいのかわかりませんでしたね。
夫はご飯を作ってくれたり、家事もできる範囲でやってくれました。安定期には「赤ちゃんが生まれる前の2人の時間を」ということで、先生に許可をもらって箱根にプチ旅行に行きました。
結局、逆子は治らず、予定帝王切開での出産となったんですが、健診に行った日に「で、(出産日)いつにしますか?」って突然聞かれて。「え!私が決めるの?」とびっくり。1月末か2月の始めと言うことだったので、1月末だと数週間後で気持ちの準備もできなそうだったから、「2月3日頃?」とお願いしたら、ちょうど節分の日でした。雑談の中で決めちゃうんですね(笑)。
出産は夫も立ち会ってくれました。帝王切開でおなかを切るので、前日から病院に宿泊。「明日生まれてくるんだ~」と思うと、眠れませんでした。出産の時の「ヒーヒーフー」とか憧れていたんですけどね。ぜんそく持ちだったから、かえって帝王切開でよかったかなと思っていました。でも、助産師さんが健診に来て「これだったら、自然分娩でいけるかも?」って言うんですよ! 「え~」ってびっくりですよ。だって、自分はおなか切る覚悟決めて来たし、「ヒーヒーフー」の練習もしていないし。結局、そのまま帝王切開での出産になったんですけどね
生まれてきた赤ちゃんを見て、感動という言葉だけでは片づけられない感じ。「ありがとう」「よく来てくれたね~」という思いがいっぱいでした。夫はビデオカメラで撮影していましたが、途中で撮れなくなって「もういいよね」って。興奮して泣いていました。
出産後はしばらく実家で過ごしました。産むことしか考えていませんでしたから、3時間ごとの授乳は本当に大変でしたね。赤ちゃんは吸う力が弱かったし、母乳もあまり出なかったので搾乳もしました。いろいろやっていると授乳の間に結局1時間半くらいしか寝られない。それが一番辛かったかな。
おむつ替えも手順が合っているのかわからない、帝王切開の傷も痛い、夜中にいつもと違うような「ぎゃー」って泣き方をして助産師さんに電話しようかと思ったり……。ふにゃふにゃの命を守らなくちゃと思いつつ、でも抱っこに慣れていないからがちがちの体勢。
野生の本能丸出しで、子育てしていたような気がします。こんな訳のわからない状態って、出産前には想像できませんでした。
母乳があまり出なかったのに「母乳がいいんだ」と思い込んでいました。母乳外来に行って悩みを相談しても不安は解消されず、ベランダに出ても、気分転換になんてなりませんでした。「家事の手を抜きましょう」と言われても、手の抜き方がわからない……。
そんなときに子育て中の友だちが「今の時代、ミルクでしょ!」って。 母乳の出が悪いからミルクと混合であげていましたが、どうしても母乳優先と思っていたので、ミルクを少な目にしていたんです。でも、友だちの言葉を聞いてミルクをあげたら、おなかいっぱいになってぐっすり寝てくれた。「ミルクでよかったんだ!」って心が解き放たれた気分でした。
今でも心配性は相変わらずです。寝返りすると、布団が顔に被さってしまわないかと思ったり。寝不足だけでもなくて、こんなにそわそわしたママで大丈夫かなと思います。今はだいぶ落ち着きましたが、里帰りしていたときには、訳もなく涙が出たことも。ある日、キッチンタイマーが鳴っていたんですよ。それだけでイライラして「キッチンタイマー止めてよ!」って怒鳴ったことも。思春期の数百倍イライラがすごかったと思います(笑)。
夫もおむつ替えしたり、お風呂に入れたり、いろいろやってくれるんですけどね。でも、出産前は夫の体を気遣っていたのに、今では「ちょっとは子どものこと見てよ!」とか、仕事や飲み会に出かける夫に「外に出られていいですね~」なんて皮肉っぽく声をかけたこともありました。
産後7カ月くらいから仕事を再開。泣かれると、なぜか下腹部を締め付けられるような気持ちになります。でも子育てするようになって、ロケ先でいろいろな人に会うことが、今まで以上に新鮮で楽しく感じます。ただ、泊まりの仕事などは子どもの預け先の調整で難しいこともありますし、今まで通りにやりたい放題できないのは、仕方ないと思っていました。
でも、テレビ番組でご一緒させていただいた子育ての専門家から、「あなた自身も大切。それもありながら、母であってもいい」と言われて気が楽になりました。今までは勝手に自分で歯止めをかけていたんだなと思いました。
子育て中のママたちってみんなキラキラして見えるんですよ。でもね、「キラキラしていないママも、ここにいますよ!」って伝えたいです。
『北陽の”母ちゃん業”まっしぐら!』
(主婦の友社)1080円
同級生お笑いコンビが40歳で母に!北陽の妊活~子育て本です。虻ちゃんの「アブない」育児に、伊藤ちゃんが「ツッコミ」を入れながら、おふたりのおもしろ&おかしいびっくりエピソードを紹介。
撮影/長尾浩之 取材・文/高祖常子