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わが子の育ちのペースを大切に!低出生体重児・早産児の育て方

わが子の育ちのペースを大切に!

低出生体重児・早産児の育て方

小さく生まれる赤ちゃんが増えています。低体重や早産で生まれた場合、病気にかかりやすいのではと、心配になることもありますね。育てる上でどのようなことに注意したらいいのか、小児科医の加部一彦先生にお話を伺いました。

加部一彦先生
埼玉医科大学総合医療センター 小児科医。新生児医療のエキスパート。新生児集中治療室を持つ医療機関に勤務、ハイリスク出産に立会い、問題を抱える新生児のケアに迅速に対応。多くの小さな命を救い、小さく生まれた赤ちゃんの育ちをサポートし続けている。

出産年齢の高齢化に比例して
低出生体重児は年々増加傾向に

出生時の平均体重は、男女共に2900g 代になりました。2500g未満で生まれる赤ちゃんを「低出生体重児」と言いますが、最近では全体の約10%を占めるほどになりました。出生数が減っているにもかかわらず、低出生体重児は年々増加傾向にあります。妊娠22~36週未満の早産のケースや、正期産(37~41週)でも、おなかの中で十分に発育できずに生まれてくるケースが増えています。
 
低出生体重児が増加している背景として、出産年齢の高齢化や痩せ志向なども原因と考えられています。妊娠中の飲酒や喫煙、妊娠後期での立ち仕事など、妊婦さんの体の負担やストレスにより、おなかの赤ちゃんに十分な栄養や酸素が届けられにくいことも、赤ちゃんが小さく生まれてくる要因です。立ち仕事が多い職場では配慮を求めるなどし、栄養バランスのとれた食事や心身のリラックスを心がけましょう。

早産で生まれてきた赤ちゃんは
身体機能が未完成な状態

赤ちゃんが母体の中で過ごす40週は、外の環境で生きるために必要な機能を準備する期間。36週未満の場合、身体機能が完成していない状態で生まれることになります。胎児期に生育が不十分で小さく生まれた赤ちゃんは、成人してから生活習慣病を発症するリスクが高いことがわかっています。
 
早産の中でも34~36週(後期早産期)で生まれてくる赤ちゃんは、特に注意が必要です。体重は2500g以上あっても、心肺や体温調節、免疫などの機能が未熟な状態にあるからです。
 
早産でも大きめの赤ちゃんは、正期産で生まれてきた赤ちゃんと同じ扱いをされてしまいがちですが、外の環境にうまく適応できないことがあります。呼吸が安定しない、おっぱいを吸う力が弱い、体温調節ができない、黄疸が出やすいなどのトラブルも心配されます。

小さく生まれた赤ちゃんの集いに参加しよう!

赤ちゃんが小さめだと、成長も心配になりますね。大きな病院や自治体で、低出生体重児や早産児の親の会をサポートしているところもあります。集いに参加してちょっと早めに生まれた赤ちゃんを見たり、親同士で語り合うことで、気持ちが軽くなることも多いものです。問い合わせてみましょう。

低体温や体調変化に気をつけ、同月齢の子どもと比べない

1000g未満の超低出生体重児や2500g未満で成長が心配な赤ちゃんは、NICU(新生児特定集中治療室)で24時間体制でケアされます。その後状態が改善したらGCU(継続保育治療室。病院や症状による)に移ります。
 
まだ小さいのに退院をOKされるとお母さんは心配かもしれませんね。でも退院できるということは、普通の生活ができると判断されたから。医師から特に指示がなければ、自宅では普通に過ごして大丈夫です。
 
ただし34~36週で生まれた赤ちゃんは、体温調節機能が未熟で、おっぱいを吸う力も弱い場合が多いのです。

自宅に帰ってから、お風呂上がりなのに短時間でおなかが冷たくなっていたり、おっぱいが十分に飲めていないときには、早めに小児科を受診しましょう。
 
でもあまり神経質になることもありません。小さく生まれた赤ちゃんは固有のペースで発育します。同月齢の子どもと比べると小さくて心配になりますが、一人歩きする頃には、平均的な体重で生まれた赤ちゃんとほとんど差がなくなってくるでしょう。赤ちゃんがきげんよく、赤ちゃんなりのペースで育っていれば大丈夫です。不安がある時は、かかりつけ医や保健所に早めに相談しましょう。

 

イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子

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