春からの新生活をポジティブにイメージ
4月の入園を控え、「まだおむつがとれていないけど大丈夫かしら」、 入学を控え「文字が書けておいたほうがいいの?」、ママの仕事復帰を控え「子育てと両立できるかしら」「パパは協力してくれる?」…など、悩みはつきないものです。「りんごの木」代表の柴田愛子先生に、入園・入学準備のポイント、春からの仕事復帰に向けての心構えについて聞いてみました。
柴田愛子先生
「子どもの心に寄り添う保育」をモットーとする保育施設「りんごの木」代表。保育者。子育て支援施設や幼稚園、保育園などでも講演。著書に『それは叱ることではありません』(PHP 研究所)など多数。
http://ringono-ki.org/top.htm
[入園編]
「入園」という、わが子の初めての旅立ち。嬉しく思う反面「うちの子、大丈夫かしら?」と心配でたまらないママの気持ちもわかりますが、心配なことばかりを言葉にすると、子どもは不安に思ってしまいます。この時期にいちばん大切なのは、「入園、楽しみだね!」という言葉。わが子の“できないこと”でなく“できること”に目を向け、前向きな言葉で入園前の日々を楽しく過ごしましょう。
お友だちに手が出ます。園でもたたいてしまわないか心配です。
幼稚園や保育園は、ありのままの子どもたちを受け入れるところです。集団生活が始まると、口でうまく説明できずについ手が出てお友だちに泣かれ、先生に注意されることもありますが、園ではこのような経験を重ねながらコミュニケーションを育んでいくのです。あまり心配せず、子どもの発展途上として見守りましょう。入園時、担任の先生に「うちの子ちょっと手がでるんです。見守ってください」のひと言を伝えておくとよいでしょう。
登園の時、泣かれたらと思うと不安になります。
入園当初、ママと離れる時に大泣きする子も多いですが、初めて親と離れて過ごすのだから当たり前。でも子どもは意外とたくましく、離れる時は泣いていても、ママがいなくなるとスイッチが切り替わり、元気に遊び始める子もいます。登園時の保護者の対応については、「泣き止むまでそばにいてもOK」など、園の大まかな方針があることが多いもの。まずは園にまかせることから始めてみましょう。
同じ園のママと上手におつきあいできるか心配です。
子どもが十人十色なように、ママも十人十色。同じ園のママ同士のおつきあいの中では、気の合わない人も出てくるでしょう。すべての人と平等におつきあいしていくには無理がありますし、自分が苦しくなってしまいます。「気の合うママが一人見つかればいい」くらいのつもりで、たくさんのママとの出会いを前向きに楽しみましょう。
まだおむつがとれないのですが大丈夫でしょうか?
2、3歳の頃におむつが取れる子は多いようです。でも、おむつをとることに必死になり「そんなことでは幼稚園にいけないわよ!」などと叱っていては、園に対してマイナスなイメージを抱いてしまいます。おしっこが出る時のしぐさを観察し、タイミングを計ってトイレに連れていきましょう。「入園までに」と焦ると子どもは察知し、体を硬くしてしまい逆効果。おむつが取れていなければ「まだおむつなんです。よろしくお願いします」と園に伝えればいいのです。
[入学編]
一人で学校に行ったり勉強が始まったり、環境が大きく変わる小学校。新しい人間関係がスタートする時期だからこそ、「僕は(私は)○○がしたい」「トイレに行きたい」など、自分の気持ちを言葉で表現できるようなコミュニケーション能力を身につけておくと安心です。家族、学校の先生、学童の先生、近所に住むママなどと連携し、学校や地域に少しずつなじんでいくようサポートしていきましょう。
入学までにひらがなを書けるようにしておいたほうがいいですか?
年長児くらいになるとひらがなに興味を持ち始める子もいますが、興味を持たない子もいます。ひらがなは小学校の授業でしっかり習いますので、今書けなくても心配ありません。最低限、自分の物と人の物が区別できるよう、自分の名前だけは読めるようにしておきましょう。子どもの吸収力は大人の倍以上。ひらがなに興味を抱き、「この字はなあに?」と聞いてきたら、どんどん教えてあげましょう。
ひとりで通学できるか心配。どんな準備をすればいいの?
時間に余裕がある時に、子どもと学校までの道のりを歩いてみましょう。信号や踏切、何かあった時に助けを求められる「子ども110番の家」などを確認し、「ここは車に気をつけてね」「このシールが貼ってあるおうちなら何かあった時にピンポンしていいんだよ」などと伝えます。通学路以外にも、学校や自宅周辺の道を歩き、「ここは図書館だね」など、入学後の生活をイメージしながら“近所を知る”働きかけを。
保育園に比べると学童保育の預かり時間が短くなり、仕事との両立が心配です。
保育園は預かり時間が長く延長保育などの融通がききましたが、入学すると、学童保育に通うとしても保育時間が短く、勤務時間などの調整がつかず悩むママもいるようですね。大変なことも多いでしょうが、パパや祖父母に協力してもらう。ファミリーサポートを利用するなど検討を。どうしてもの場合には、同じ保育園のママや近所のママなど信頼できる大人同士のネットワークを再確認し、「学童のお迎えに間に合わない時は、同じマンションのママ同士で助け合う」のも一案です。
PTAが大変って聞いたけど、やらなくちゃいけないの?
特に役員を引き受けると時間を拘束されることもありますが、PTA活動を通して学校の様子がわかったり、先生とコミュニケーションを取る機会が増えるなどの利点もあります。「子どもたちは毎日学校でこんな風に過ごしているんだ」と新しい発見ができるのも事実です。6年間お世話になる場所ですから、「何かやらされたら面倒」とネガティブにとらえず、「できる時にできることを」というスタンスでチャレンジを。
[ママの仕事復帰編]
新しく仕事を始めると、生活サイクルががらりと変わることでしょう。このタイミングで100点満点をめざすと、日々の忙しさの中で、子どもだけでなく自分に対してもイライラしてしまいます。「後回しにできることは後回しにする」「今やらなくてもいいことは省く」など、適度に肩の力を抜くことが大切です。パパをはじめ周囲の協力を仰ぎながら、育児と仕事の良いバランスを見つけていきましょう。
春から仕事に復帰。子どもにいつ、どのように伝えたらいいですか?
あまり早く伝え過ぎても子どもは忘れてしまったり、逆に心配しすぎることもあります。幼稚園や保育園の場合は入園の2週間くらい前、小学校の場合は入学の1~2カ月前くらいに伝えましょう。伝える時に大切なのは「ママお仕事始めても良いかな?」と子どもに意見を聞かないことと、仕事を始めることにうしろめたさを抱き、「子どもがかわいそう」と思わない事。「ママ、4月からお仕事始めるんだ。一緒に頑張ろうね!」と、明るくシンプルに伝えるのがいちばんです。
パパの協力はどのようにあおげばよい?
仕事がスタートすると、これまでママがやってきた育児や家事を同じようにこなすのは難しくなってきます。最近は共働き夫婦が増え、朝スーツ姿で子どもを連れてくるパパも増えてきました。パパの性格や家事経験にもよりますが、育児や家事のどの部分を主体的に協力してもらえるのかを相談し、役割分担を。子どもが体調を崩した時の対策も、事前に練っておきましょう。
パパ以外に頼れる大人がいない場合はどうすればいい?
自治体の家庭支援センターや子育てひろばなどでは、働くママからのさまざまな相談に応じています。不安や悩みを受け止めてくれたり、子育てサービスの紹介もしてくれるでしょう。日頃から近所の方に挨拶してわが子を知ってもらい、こまめにコミュニケーションを取っておくと、何かあった時にも安心ですね。ママ友や先輩ママからのアドバイスに救われることもあります。
時間の使い方のコツを教えて。
まずは自分の中で優先順位を決めて大体の一日のスケジュールを立て、新生活をスタートさせましょう。うまくいかないところは「じゃあこうしてみよう」と修正しながら前に進んでいくうちに、自分なりにしっくりくる時間の使い方が見つかるはずです。忙しくて子どもと遊ぶ時間がとれない日があっても大丈夫。「仕事が早く終わった日に家でたっぷり遊ぶ」など、メリハリをつけて過ごしましょう。
イラスト/犬塚円香 取材・文/長島ともこ