熱以外の症状にも目を向けることが大切
子どもの発熱。何度経験しても心配になるものです。発熱は、どうして起こるのでしょうか。どのタイミングで病院に連れていけばよいのでしょうか。小児科医の萩原温久先生に伺いました。
萩原温久先生
萩原医院副院長(東京都板橋区)。日本小児科学会専門医。1991年以来、小児科医として、地元の人々の健康に貢献。お母さんや子どもの気持ちが少しでも軽くなるよう、会話を大切にした診療を重視している。
子どもの発熱の原因の多くは、ウイルスや細胞などの病原微生物の感染。かぜや気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患や急性胃腸炎などさまざまです。病原微生物に感染すると、私たちの体内の細胞が働き「サイトカイン」という物質が作られ、ウイルスや細菌の増殖を抑えて体を防御します。この「防御反応」の一つが発熱なので、決して“悪者”扱いしてはいけません。
発熱の原因がかぜの場合、かぜをひくたびにそれぞれの原因に対する免疫(抵抗力=体を守る力)が作られるので、「熱を出すたびに自分自身で免疫力(抵抗力)を身につけて体が丈夫になっていく」と考えてよいでしょう。
子どもの平熱は、大体36~37℃。平熱よりも1℃以上高い場合を発熱と考えます。
ただし、体温は一日中同じではなく、朝は低めで夕方は高めです。授乳後や食後、泣いた後、体を動かした後、気温や暖房などの影響でも高めになります。日頃から子どもが元気な時の体温を測り、平熱を知っておきましょう。
●息苦しそう、呼吸の様子がおかしい
(鼻づまり、呼吸が速い、かすれ声、おっとせいの鳴き声のようなせき、ゼイゼイ、ヒューヒューする、胸やおなかがペコペコくぼむ、鼻がヒクヒクするなど)
●吐き気がある。何度も吐いた
●顔色が悪い。あやしても笑わない。
●元気がない。ぐったりしている。
●おっぱい、ミルクの飲みが悪い
いつも赤ちゃんのお世話をしている人の直感が大切。近所に何でも相談できるかかりつけ医を持ち、「何となくいつもと様子が違う」と思ったら受診を。
●冬に流行。インフルエンザとRS ウイルス感染症
インフルエンザ | RS ウイルス感染症 | |
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症状 | 38℃以上の発熱、頭痛、倦怠感、関節・筋肉痛などの全身症状 | 鼻水・鼻づまり、せき、発熱 ※生後6カ月未満の乳児が感染すると細気管支炎を発症することがある。 |
治療法 | タミフル、リレンザなど抗インフルエンザ薬の服用 | 特別な治療法はない。鼻水を十分吸引する |
小児科を受診する理由でいちばん多いのが「発熱」ですが、熱の高さだけで病気の緊急度や重症度を判断することはできません。顔色、機嫌、おっぱいの飲み具合、息づかいなどにも目を向けることが大切です。熱があっても、「飲む(食べる)、寝る、遊ぶ」が普段通りなら、急いで受診する必要はありません。
逆に、さほど熱がないのに元気におっぱいを飲まない、あやしても笑わないなどの症状(コラム参照)があれば受診しましょう。また、生後3カ月未満の38℃以上の発熱は要注意。かぜとの区別が難しい髄膜炎、尿路感染症など細菌感染の可能性があるので早めの受診が必要です。最近は、子どもを心配するあまり、スマホやパソコンの検索でさまざまな情報に惑わされる保護者が増えました。目の前にいるお子さんの状態をしっかり見て、不安なことはメモや録音・録画し医師に相談しましょう。
発熱時は、こまめな水分補給を。高熱でつらそうな時は入浴をひかえますが、一時的に下がった時は軽くシャワーで流したり、体をふいてあげると気持ちよく過ごせます。汗をかいたら着替えをしてあげましょう。
冬の時期は、インフルエンザやRSウイルス感染症、ノロやロタウイルスによる胃腸炎など発熱を伴うさまざまな病気が流行します。規則正しい生活、バランスの良い食事を基本に、日頃から病気に強い体づくりを心がけましょう。
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/長島ともこ