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理解と声かけとさりげない仲間意識が助けになる  ひとり親家庭への子育て支援を知ろう

理解と声かけとさりげない仲間意識が助けになる

ひとり親家庭への子育て支援を知ろう

子どもがいながら離婚する夫婦も少なくありません。ひとり親で子育て奮闘中の方、そしてそのような方が身近にいらっしゃる方もいるでしょう。自治体によるひとり親家庭の支援制度について、また個人レベルでできるサポートについて、子育て支援に詳しい森田明美先生に教えていただきました。

森田 明美先生
東洋大学社会福祉学科教授。専門は児童福祉学。共働き、ひとり親、10代の親など、子育て家庭の実態と、入所型施設、保育所、幼稚園、児童館、放課後児童クラブなどによる子育て支援に関する調査研究を行う。地域や家庭で子どもが健やかに育つ仕組みづくりに携わる。

半数以上が6歳未満の子どものいるひとり親家庭

近年、家族のあり方、子育ての環境が多様化しています。保育園や幼稚園など集団の中に、ひとり親家庭で育っている子どもが複数いることも珍しくありません。現在、児童扶養手当の受給者数は100万人を超えています。受給申請をしない方もいるため、ひとり親家庭の実数はそれより多いでしょう。
 
平成23年に厚生労働省が行った母子世帯等調査によると、子どもがいて離婚した夫婦のうち、子どもが6歳未満という人は半数を超えています。まだまだ子育てが大変な時期。そこで、サポート役割を担っていたのが祖父母です。
 
特に、父親が子どもを引き取る場合や、10代~20代前半という若さでシングルになった母親などは、多くの場合、子育てを祖父母がサポートしていました。同居したり、一緒に食事を摂るなど、子育てや経済的な負担もしてくれている場合が多かったのです。
 
ところが最近は、核家族化となり離れて暮らしていたり、親世代が介護の問題を抱えていたり、生活に困窮しているなど、子育てに十分な協力ができない状況に……。もちろん社会的な支援はありますが、ひとり親が子育ても経済面もすべて、担わなくてはならないケースが増えています。
 
社会全体で次世代を育てる機能が失われてきた歪みが、ひとり親家庭の子育てや経済的な負担を大きくしています。

非正規雇用になり経済困窮に陥るケースも

離婚の原因として最近目立つのは、父親によるDVです。暴力が子どもに及ぶと、母親が離婚を決意するケースが多くあります。中には別れた後、ストーカーのようになる父親もいて、母子が一緒に逃げる(避難する)ことが最優先という場合もあります。
 
別れた父親が養育費を支払うと約束しても、いつの間にか支払われなくなることが多いのです。シングルマザーとなって生活のために働きに出ても、正規雇用の仕事に就くことが難しく、十分な収入が得られない、保育代にお金がかかるなど、シングルマザーの生活が困窮してしまうことが少なくありません。
 
一方、シングルファザーの場合も、出張や残業ができず非正規雇用に転換せざるをえないなど、親ひとりでする子育てと仕事の両立は難しく、結果として収入が低くなる傾向にあります。
 
このような状況からシングルファザーにも支援が必要となり、ひとり親家庭支援制度は母子と父子両方が対象になりました。
 
国が設けた社会保障制度は色々とありますが、当事者に情報が伝わっていない、自分から申告しないと補助金を受けられないなど制度が利用しづらい、あるいは本人が支援を受けることを遠慮することもあり、せっかくの制度がうまく機能していません。ひとり親家庭の貧困がなかなか解消されないのが現状です。

ひとり親家庭の公的な経済サポート

ひとりで子どもを育てるにあたり、経済的な不安は大きいもの。国がひとり親家庭を支援する制度を設けています。情報を調べて、自分で申請することが必要です。お住いの地域の自治体に窓口があるので問い合わせましょう。何から手をつけたらいいかわからない場合は、自治体の「母子・父子自立支援員」にまず相談しましょう。


児童扶養手当
父母どちらか一方の養育しか受けられない子どものいる家庭に支給されます。所得に応じて支給金額が変動。0~18歳に達した年度末(3月31日)までの子どもが対象です。支給月は4月、8月、12月。
(児童ひとりの場合〜全部支給:月4万2290円/一部支給:月4万2280円~9980円 所得に応じて10円単位で変動/第2子以降の加算額など、詳しい金額は問い合わせを)

 

児童手当
ひとり親家庭に限らず、国内に住む0歳から中学卒業までの子どものいる全家庭に支給されます。所得に応じて支給金額が変動。支給月は2月、6月、10月。
(支給額0〜3歳未満:月1万5000円/3歳〜小学校修了前:月1万円、第3子以降:月1万5000円/中学生:月1万円/所得制限以上:月5000円)

 

児童育成手当
自治体によって、独自でひとり親家庭へ支援を行なっているケースがあります。東京都は「児童育成手当」という制度名。(支給額月1万3500円)制度の名称や詳しい金額、支給対象者などは自治体によって異なるので、自治体に問い合わせましょう。

 

障害児童福祉手当
精神または身体に重度の障がいがあり、日常生活で常時介護をする必要がある在宅の20歳未満の児童に支給されます。所得に応じて支給金額が変動。支給月は原則2月、5月、8月、11月。
(支給額月1万4600円)

 

特別児童扶養手当
精神または身体に重度の障がいがある20歳未満の子どもを家庭で監護、養育している父母等に支給されます。支給月は原則4月、8月、12月。
(支給額:1級~月5万1450円/2級~月3万4270円)

 

母子家庭・父子家庭の住宅手当
自治体によっては、ひとり親家庭への住宅手当や家賃補助を行っているところがあります。支給条件や金額はさまざまなので、自治体へ問い合わせましょう。

 

医療費助成制度(ひとり親家庭)
多くの自治体で用意されている支援制度。18歳未満(18歳に達した年度末まで)の子どもの医療費が無料だったり、養育している父母の負担額が軽減されるなど、内容は自治体により異なります。

 

自立支援教育訓練給付金
ひとり親家庭の親が仕事に就けるよう、主体的な能力開発の取り組みを支援。教育訓練を受講し終えた場合、経費の60%が支給されます。受講前に自治体から講座の指定を受ける必要があるので、事前に相談しましょう。

 

ひとり親家庭対象の減額・割引制度(内容は自治体によって異なります)
国民年金、国民健康保険料の免除/保育料の免除と減額/粗大ゴミ処理手数料や上下水道料金の減免/バスや電車の交通機関の割引 など

親子の絆を保つため、養育費や面会交流を続ける努力を

親が経済的にも精神的にも苦しい状況が続くと、そのしわ寄せは子どもに影響し、健やかな育ちに暗い影を落としてしまいます。
 
ひとり親で子どもを育てている方は、制度を積極的に利用して、暮らしを安定させることが大切です。
 
全国の自治体に“母子・父子自立支援員”が配置されていて、ひとり親家庭のさまざまな悩みや心配事の相談に応じています。手当を受給するための手続き、就職の相談、いざという時の子どもの預け先など、何かと頼りになります。各自治体の担当に気軽に問い合わせましょう。
 

他に、NPO法人や民間の団体なども、さまざまな支援を行っています。インターネットで調べるなど、自ら動くことで専門家や詳しい情報に出会えます。また、コミュニティーサイトなどで悩みを共有できると、前向きな気持ちになれることもあるでしょう。
 
親が離婚しても、子どもにとっては両親とも大切な存在。絆が途切れることなく、ずっと愛情を感じていられることは安心感に繋がります。DVなどよほどの事情がない限り、別れても親子として定期的に交流できる機会を持ちましょう。
 
養育費や面会交流について悩むことがあれば、養育費相談支援センターに相談を。電話やメールでも対応してくれます。

 

 

身近なひとり親家庭には、さりげないサポートを!

もし身近にひとり親がいたら、まずは理解者になってあげること。あれこれ詮索せず、「何か困ったことがあったら言ってくださいね」とさりげなく声をかけるのがいいでしょう。余力があれば「週末出かけるので、お子さんを一緒に連れて行きましょうか」「夕食、一緒に食べませんか」など、少しおせっかいな声がけもひとり親家庭にはありがたいものです。
 
特にシングルファザーの場合、SNSなどのグループから外れてしまい、情報が届かないこともあるようです。子どもを一緒に公園で遊ばせたり、園の情報やお友達との様子を教えるなど、ちょっとしたサポートを心がけましょう

 

養育費、面会交流等に関する相談は

夫婦が別れた後、子どもの養育費と面会交流はセットで考えるべき課題ですが、継続が難しいことも事実。一人で悩まず、専門家のアドバイスを求めましょう。養育費相談支援センターでは、養育費と面会交流について電話やメールによる相談も受け付けています。

 

養育費相談支援センター
http://www.youikuhi-soudan.jp

 

◎電話相談: 03-3980-4108   
0120-965-419 (携帯不可) 

 

◎メール相談: info@youikuhi.or.jp

 

イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子

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