自分からサポートを求める!周りが助ける!
産後はホルモンバランスの変化もあり、体や心にさまざまな変化や気がかりなどが大きくなります。産後うつにならないように、どう考えたらいいのか、また夫や周囲はどのように対応したらいいのかなど、助産師でもある市川香織先生に伺いました。
市川香織先生
助産師。文京学院大学保健医療技術学部看護学科准教授。一般社団法人産前産後ケア推進協会代表理事。厚生労働省母子保健課、日本助産師会事務局長等を歴任。妊産婦や女性の相談、講演活動、厚生労働省研究事業への協力、産後ケアに関する活動に力を注いでいる。
妊婦さんは、出産の始まりや経過は母親学級や助産師・看護師さんなどから情報を得ていると思いますが、お産直後のことは聞いていない人が多いのではないでしょうか。出産は赤ちゃんを生み出すときに胎盤が剥がれ落ちますから、体内で傷を負っている状態です。外から外傷として見えないのでとてもわかりにくいのですが、全治8週間とも言われている状態です。
産後「体がつらい」「こんなに筋肉痛になるのか」と思うママも少なくありません。個人差もありますが、平均出産年齢が30歳を超えていることもあり体力的なことも要因となっています。その後、母乳が思うように出なかったり、乳房の腫れやトラブル(乳腺炎や乳首が切れるなど)に見舞われることもあります。
また産後すぐに保育園の入園のことを考えなくてはならなかったり、ミルクへの切り替えを赤ちゃんに慣れさせるなど、心配や悩みごとがあとからあとから湧いてくるでしょう。
妊娠・出産によってママの体の中のホルモンバランスは大きく波打っています。出産時のホルモン変化は、エベレストから落ちるくらいの勢いです。そのため、気持ちをコントロールすることが難しくなり、周りからの何気ない言葉に大きく傷ついてしまいます。悪気はなくても「よく泣くね」「おっぱいたりてる?」などと言われると、「私が泣き止ませられないから?」「私がおっぱいをたくさんあげられていない?」と必要以上に自分を責めてしまうのです。
産後うつになる可能性は7人~10人に1人の割合。赤ちゃんが生まれたという環境変化は思った以上にストレスで、ママだけでなく、パパにも産後うつは起こります。疲労困憊、起きられない、眠れない、気持ちが沈むなどの症状がみられるようになります。
本人としては赤ちゃんとの生活を頑張らなくてはと思っているのに、体と心がついていかない。自分の心が弱いから、自分が頑張れていないからと思ってしまいます。自分で助けて欲しいとSOSを出せればいいのですが、産後うつに自分で気づくのは難しく、周囲の気づきとサポートが欠かせません。
症状が重くなると考えることに疲れ、自分で判断するのも難しくなります。「家事の何から手を付けたらいいの?」「ご飯の献立をどうしたらいいの?」と自分で行動できなくなり、赤ちゃんのお世話もままならなくなります。
ママが産後うつになると、笑顔が消え、休養が必要になります。家事育児の主担当がパートナーになり、場合によっては仕事と育児の両立が困難になることもあるのです。さらにはパパまでもが産後うつになってしまう可能性もあります。
産後うつに絶対にならない方法はありませんが、予防したり、軽いうちに回復するためには、産後に向けた体制を整えておくことが大切。そして何よりも、パートナーの変化に気づく夫婦のコミュニケーションが欠かせません。辛そうだなと思ったら、早めに保健師や助産師に話を聞いてもらえるように調整したり、産後ケア施設の利用を検討しましょう。
産後うつ予防のために
パパ・パートナーが妊娠中からしておきたいこと
・産後3カ月までのサポート体制を考えよう
・お互いの感情を出し合える関係づくりをしておこう
・ママが子育てから離れられる時間を作ろう
・産後に利用できる地域のサービスを確認しよう
・MY 助産師・保健師を見つけておこう
●産後うつについてのリーフレット「ママから笑顔がきえるとき」
文京学院大学のサイトからダウンロードできます!
https://www.u-bunkyo.ac.jp
●リーフレットの内容が約4 分の動画にまとめられています。
https://www.youtube.com/watch?v=3MFwHvnjGtM&feature=youtu.be
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/高祖常子