受ける場合は夫婦で“目的”の共有を
平均出産年齢が30歳を超え、出生前診断を選ぶ夫婦も少なくありません。出生前診断は受けるべきなのでしょうか。結果はどのように受け止めればよいのでしょうか? 昭和大学医学部産婦人科学講座主任教授の関沢明彦先生に伺いました。
関沢明彦先生
昭和大学医学部産婦人科学講座主任教授・昭和大学病院産婦人科科長。日本産婦人科医会常任理事、産婦人科診療ガイドライン作成委員などもつとめる。『新版 安心すこやか妊娠・出産ガイド』(メディカ出版)を監修。
出生前診断とは「生まれてくる赤ちゃんが病気や異常をもっているか」を、出産前に調べる検査の総称。一般的な妊婦健診で行う超音波(エコー)検査でも、胎児の状態を確認できますが、胎児が重い病気にかかる可能性がある場合などに、赤ちゃんの染色体異常などを調べる検査が行われることがあります。
この検査は、赤ちゃんが染色体異常などの“可能性”が高いかどうかを調べる「非確定的検査」と、「確定検査」の2種類あります。代表的な「非確定的検査」として知られているのが、2013年から実施され、妊婦さんの血液をとって胎児に染色体疾患がないかどうかを調べる「新型出生前診断(NIPT)」(表組参照)です。
受けられる時期は妊娠10週以降、費用は施設により異なり10~17万円。日本医学会が定めた条件をみたす全国89の施設で受けることができ、検査から約2週間後に、染色体疾患の可能性について「陽性」や「陰性」などと報告されます。
この検査を受けるか受けないかは、「生まれてくる赤ちゃんのことをどれだけ知りたいか」を考えた上で判断することが大切です。
受ける場合はママ一人で決めず、「何のために受けるのか」「結果が陽性と出たら、どのように受け止めるのか」などを夫婦でじっくり話し合い、その目的を共有するようにしましょう。
●新型出生前診断(NIPT)でわかる先天性疾患
※統計によると、これまでに「新型出生前診断(NIPT)」を受けた妊婦さんの平均年齢は38・4歳、週数の平均は13・3週。40歳の妊婦さんがこの検査を受けて結果「ダウン症 陽性」の場合の的中率は約95%で、35歳の妊婦さんの場合の的中率は約80%。羊水検査でも「染色体に疾患がある」と出た場合、妊娠21週目までに中絶の選択をする人も。
「新型出生前診断(NIPT)」の精度は高く、検査結果が「陽性」の場合は、妊婦さんのお腹に針をさして胎児の染色体や遺伝子の変化を調べる羊水検査などの「確定検査」を受けることになります。これらの診断は、「産む」か「産まない」かを安易に判断する材料ではありません。そして最終的な家族の判断は、尊重されるべきものです。新型出生前診断を実施している病院は、カウンセリング体制が整っており、診断を受けるか受けないかの相談はもちろん、結果の受け止め方、陽性の場合は障がいの内容や治療、サポート体制などについても相談することができます。不安なことやわからないことがあれば何でも聞き、ひとつひとつ納得しながら受け止めましょう。
赤ちゃんに障がいがあると診断された場合、「不幸だ」と考える方がいるかもしれませんが、障がいがある子の支援体制は充実してきています。障がいをもつお子さんを愛情たっぷりに育て、幸せに暮らす家族もたくさんいます。障がいのある子が、地域の中で健常な子どもたちと共に成長できるような土壌をつくっていくことも大切でしょう。
新型出生前診断(NIPT)を実施している病院
昭和大をはじめ、カウンセリング体制の整った全国89施設で実施。(2018年2月13日現在)具体的な施設は以下で確認できます。
http://jams.med.or.jp/rinshobukai_ghs/index.html
日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/長島ともこ