危険な状況を作らず、子どもと一緒に行動しよう
水に溺れる、花火で火傷を負う、炎天下や車中での熱中症など、夏に起こりやすい子どもの事故。一瞬の出来事で、命を落とすことにもなりかねない事故を防ぐには、どのようなことに心がければいいのでしょうか。小児科医の神川晃先生にお話を伺いました。
神川晃先生
神川小児科クリニック(大田区)院長。地域のホームドクターとして、病気の子どもたちのケアはもちろん、お母さん方の不安や悩みに対しても、明快で的確なアドバイスを与え信頼を寄せられている。
暑い季節。日中、気軽にお風呂で水遊びをさせることもあるのではないでしょうか。子どもの水の事故で最も多いのは、海でも川でもなく家庭の浴槽。乳幼児の場合、縁から中を覗いて転落し、深さ30cm程度の残り湯でも溺れてしまいます。家だからと油断せず、浴槽やビニールプールで水遊びをさせる時は、大人が絶対にその場を離れないこと。きょうだいでも、下の子を上の子が助けるのはほとんど不可能ですから、子どもだけで遊ばせないことが大切です。また、目を離したすきに、子どもが浴槽をのぞき込むこともありますから、日頃から浴槽に水を溜めておかない習慣が、事故防止につながります。
毎年夏になると起こるのが、車に残された乳幼児の熱中症事故。炎天下の車内放置は死に至る危険があると報道で知っているのに、「短時間だから」「よく寝ているから」という認識の甘さが最悪の事態を招きます。短時間でも車を離れる場合は、子どもを一緒に連れ出すのが大原則です。
ライターやタバコの置き忘れに代表されるように、うっかり注意を怠ったり、ちょっと気を許した一瞬に起こるのが子どもの事故。子どもは予測不可能な行動をする場合もあるのです。常に子どもの目線で考え、危険はできるだけ排除して、子どもを事故から守りましょう。
こんな状況ではこんな危険が…。事故を防ぐポイントとは?
[家庭内]
浴室やビニールプールで水遊び……
わずかな水でも溺れる危険あり
乳幼児の水の事故は、浴槽に落ちて溜めていた残り湯で溺れるケースが最多。すぐ救出できても、一時呼吸が止まって低酸素性脳障害を起こしたり、雑菌が繁殖した残り湯を飲んで重篤な細菌性肺炎になることも。日頃から危険がない環境にし、水遊びをさせる時はその場を離れないことが大切です。
<対策>
◇風呂の残り湯を溜めず、浴室の施錠を習慣に。
◇水遊びをする時は、その場を離れない。
◇上の子が一緒でも、子どもだけで遊ばせない。
◇横転の危険があるので浮き輪を使わない。
ライター&タバコの置き忘れ……
いたずらして火傷や火事 の原因に
パパやママがタバコを吸う家庭では、ライターやタバコの管理は厳重に。カチッと火がつくライターに子どもは興味津々です。子どもが小さいうちは家で禁煙が望ましいですが、吸う場合は、子どものいないところで、手の届かないところに置くなどを習慣にし、細心の注意を払いましょう。
<対策>
◇タバコは部屋では吸わず、吸う場合は子どもに見えないところで。
◇タバコやライターは、子どもの手の届かないところに置く。
[アウトドア]
海や川での水遊び……
あっという間に流される危険あり
自然の中での水遊びは、あらゆる事態を想定して事前の備えが大切。
一瞬で流されたり溺れることもあるため、ライフジャケットを着用させ、子どもと一緒に行動すること。複数の家族で行動する時も、大人1人で子ども数人を見るのはNG。いざという時、命を守りきれません。
<対策>
◇ライフジャケットを着せる。
◇子どもだけで遊ばせない。大人も一緒に水に入る。
◇大人1人で複数の子どもの面倒を見ない。
樹木や草むらでの虫取り……
虫さされに注意
子どもは、汗に虫を引き寄せる物質が含まれているため、大人以上に虫にさされやすい。長袖長ズボンを着せて、肌の露出部分を少なくするのが第一。露出部分には、虫除け(スプレーやシート)対策をしましょう。
<対策>
◇長袖長ズボンで露出部分を少なく。
◇虫除けスプレーや虫除けシートでガード。
●茶毒蛾に要注意
ツバキ科の植物の葉につく茶毒蛾の幼虫(毛虫)に刺されると、かゆみ、かぶれの原因に。刺された時は粘着テープで毒針を抜く応急処置をし、皮膚科を受診して。
キャンプ場や家の外で花火……
火傷に注意
花火をする機会に、腕をしっかり伸ばして持つ、振り回したり人に向けない、終わった花火は水の入ったバケツに捨てるなど、遊び方を教えて。
小さな子の場合は、大人が手を添えましょう。足に火の粉が落ちる危険もあるので、サンダルなどは避けた方が無難。
<対策>
◇小さな子の場合は、大人が手を添える。
◇水の入ったバケツを用意。
◇露出の少ない履物を履かせる。
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子