赤ちゃんの小さな前歯が生え始めるのをみると「むし歯にさせたくないな」と思うのが親心。そのためには、どんなことに気を配ったらいいのでしょう?歯みがきをはじめとする口内ケアや食生活について、小児歯科専門医の佐々木美喜乃先生にお話を伺いました。
佐々木美喜乃先生
UTAKA DENTAL OFFICE佐々木歯科院長、小児歯科専門医、日本小児歯科学会会員。共著に「お母さんの疑問にこたえる」シリーズ『すこやかな口 元気な子ども』『子どもの食の育て方』(医歯薬出版)など。ライフサイクルから見た口内環境についての研究で定評がある。
「むし歯予防=歯みがき」ととらえ、食べたら磨けばよいと考えているパパ&ママも多いようですが、実は、それ以上に大切なのが「むし歯のできにくい食べ方」をすることです。つまり、むし歯予防のためには、食習慣から見直すことが大切なのです。
「どんな食べ物ならむし歯ができませんか? キャンディーやチョコレートは食べさせない方がいいでしょうか?」と聞かれることもあります。でも、おやつは栄養やカロリーを補うために食べるだけではなく、心の癒しとして食べる要素が多くありますから、大きくなるにつれ、一口も食べずにいることは難しくなります。そこで、まずは、「食べる時間の管理」ができるように、子どもの食習慣を作っていきましょう。それがむし歯予防の第一歩になります。
むし歯は、口の中で細菌が糖質を栄養にして酸を作り出していくことから始まります。
つまり、食後の歯を溶かしていく時間帯を減らすようにすれば、むし歯になる確率を減らすことができるというわけです。
糖がなければ酸が作り出されることはないわけですが、糖は甘いチョコやクッキーにだけ入っているのではありません。最近では一見甘くないせんべいにも入っていますし、現代社会において、糖のない食生活を作ることはまず不可能です。そんなことからも、何を食べるかよりも、いつ食べるかがむし歯予防のカギになります。
口内の状態を表した図を見てみましょう。ごはんやおやつを食べた後にグラフが下がり、口の中が酸性になっていくのがわかります。ポイントは、グミやラムネなどたった一粒であっても酸性になっていくことです。お水やお茶など無糖の飲み物以外、ジュース類も同様に一口飲めば口の中が酸性になっていきます。
だらだら食い、だらだら飲みの生活をしていると、常に口内が酸性の状態=むし歯のできやすい環境になってしまうのです。
「食べる時間の管理」とは、食事やおやつを決められた時間に規則正しく摂るこ
と。そうすると、歯は「再石灰化」していきます。再石灰化とは、溶け出した歯の表面を、唾液に含まれるミネラルの作用でふたたび修復することです。唾液は、よくかむと分泌が活発になるので、食事の際はよくかむことも大切です。また、唾液は就寝すると分泌量が減るので、就寝前に飲食をすると再石灰化しにくくなってしまいます。就寝前の飲食は控えましょう。
むし歯予防キーワード
ミュータンス菌の増殖を防ぎ、歯の再石灰化を促すとして注目されている2つの成分について知ろう!
キシリトール
むし歯予防として注目されているキシリトール入りガムですが、子どもにとって食後のガムが定着することは、一歩間違えると、食後に甘いものを摂取することの習慣化につながってしまう可能性もあります。生活習慣や子どもの性格などを踏まえて考え、上手に利用しましょう。唾液促進の面では○。
フッ化物
フッ化物が配合された歯磨き粉やジェルには、同じフッ素の中で、種類や濃度の異なるものがさまざまです。年齢や歯の健康状態によって適したものが異なり、何を使うかで使い方も変わります。初めての利用は、保健センターの歯科衛生士や小児歯科で相談してみましょう。就寝前のケアに有効です。
イラスト/犬塚円香 取材・文/山田治奈