気が合う?気が合わない?育てにくい?育てやすい?
お子さんの個性をどのようにとらえていますか?
子どもは、自分とは異なる人格を持った人間。
わが子のパーソナリティをどう受け止め、尊重したらいいのでしょう。子どもの心の発達と親子関係に詳しい、青木紀久代先生にお話を伺いました。
「泣いてばかりで神経質すぎるのでは?」「何をするにもスローテンポで心配」などと、親はわが子の一面が気になることがあるもの。一つの特徴が、その子の個性として目立っているからとも言えますし、自分にはない部分のため、理解できずにそう感じるのかも知れません。
個性(パーソナリティ)とは、「その人らしさ」という言葉に置き換えられます。生まれながらの要素として色濃く現れる「気質」、親や周囲の人々との関わり、経験を通して形成される行動や感じ方の傾向である「性格」、社会的な人間関係や活動を通して形成されてくる「人格」も含め、あらゆる要素を通して「その人らしい」と表現できるもの。それが個性です。
ある臨床研究によると、生後まもなくの赤ちゃんでも、「のんびりした子」「マイペースで動じない子」「デリケートな子」というように、生まれながらの気質の違いが見られることがわかっています。中には、神経が過敏すぎたり、反応が遅いなどの個性が目立つ赤ちゃんもいます。
でもお母さんは他の子のことはわかりませんから、わが子が一番。子どもとの関係を、一生懸命に結ぼうとします。赤ちゃんとの時間を心地よく快適に過ごしていると、1カ月後には、個性が際だっていた赤ちゃんも、落ち着いた個性の範囲に収まってくるという研究結果が出ています。
「その子らしい」と感じる部分=個性を大切にしながら、愛情を持って関わっていくことが大切。そんな関わり方によって、育てるのが大変と思われるところが補わたり、尖った部分は丸くなって、バランスよく個性が育っていきます。例えば、のんびり屋さんのいい面が出ると、何事も丁寧に取り組む子に、気まぐれ屋の部分が落ち着くと、好奇心旺盛という“いい部分”が輝いてくるということです。
魔の2歳児と言われる段階に入ると、「子どもがかわいいと思えない」「気が合わないと感じてしまう」というお母さんは少なくありません。親の思い通りにできていた1歳までと違い、子どもが「イヤなものはイヤ」「これをしたい」と自分の思いを主張し始めるからです。この時期、お母さんは子どもの個性を改めて見て、向き合い方、コミュニケーションの取り方を仕切り直すことが大切です。
2歳を過ぎてイヤイヤが始まるのは、自我が芽生えてきたという成長の証。親が子どもの人格を尊重し、大切に関わってきたからこそ、自己主張できるようになるのです。「これまでの育て方が正しかった」と、お母さんは自信を持ちましょう。
最初の子どもは、親が気を遣って丁寧に関わるので、いい意味で「わがまま」になるものです。ところが多くの親は、第三者からの視線を気にして、個性を抑えこもうとしてしまいます。子どもがわがままを言えるのは、何が好きで何が嫌なのか判断し、自分の感覚で物事を主張する力がある証拠。逆に、自分の意志がはっきりせず、人に流される子どもの方が、親としては心配ではないでしょうか。
自己が確立していれば、打たれ強く、多少のことでつぶれない人間に育っていくものです。イヤイヤが始まったら、上手に気持ちを受け止め、意志を尊重してあげることが大切です。
イラスト/犬塚円香 取材・文/中野洋子