春から!地域デビュー!
ぽかぽか陽気に誘われて、親子で地域におでかけしませんか?支援センターや子育てひろばなど、乳幼児の親子で楽しめる場所はたくさんあります。でも私は人見知りだし…、ママ友できるかな…。
大丈夫。楽しく地域デビューするコツを独自の子育て支援活動を展開する山縣文治先生に教えていただきました。
山縣文治先生
関西大学人間健康学部人間健康学科教授。大阪市立大学教授を経て、2012 年より現職。著書に、『うちの子 よその子 みんなの子』(監修著、貝塚子育てネットワークの会編、ミネルヴァ書房)など多数。
友だちつきあいで悩むママは少なくありません。知り合いとは付き合えるけど、知り合い以外の人と交流するのが苦手という、「狭く深い」交友関係をしているママが多いような気がします。たとえばLINEが象徴的で、仲良しグループで関係がうまくいっているときは良いけれど、一旦こじれると「弾きだされるかも」という恐怖が付きまとう、危うい状態になると言えます。
でも、世の中にはいろいろな人がいて、好きな人も嫌いな人もいる中で、折り合いをつけていくことが大事。子育ては、そんな大人の人間関係を作るきっかけにもなります。
子育ては、決して一人ではできないし、ママ一人が背負い込むことでもない。「上手に周りの人に頼る力」を身につけていきましょう。「平日の昼間に親子二人でいると煮詰まってしまう」と感じているなら、外に出てみるのもいいでしょう。
子育てひろばや公園に行くと、周りはすでにグループになっていて不安を感じるという声も聞きますが、「ママ友を作らなきゃ」と意気込む必要はありません。深く付き合える人に出会えればラッキーですが、そうでなくてもいいのです。その日その時、パッと会ってしゃべってスッと離れる。そんな関係もいいものです。「また会おうね」ではなく「また会ったね」くらいの距離感がちょうどいいのではないでしょうか。
初対面のママ同士の会話は、「今、何カ月ですか?」から始まることが多いようです。そこで、子どもが寝てくれないとか、離乳食はいつから始めようかなど、日々の悩みや相談事を話せば、「そうそう、うちも」「わかる!」と共感しあえるので、話題には困りません。
喜びもつらさも、共感してもらえるのは非常に大切なこと。話すことで楽になった、救われたと感じるママも多いのではないでしょうか。
パパにも、メリットはたくさんあります。住んでいる場所と子どもの年齢が近いだけで、あとは職業も年齢も趣味もバラバラ……そんないろいろな人と出会えるチャンスは、育児中ならでは。子どもを連れてぜひ出かけてみましょう。地域に信頼できる大人の男性が増えるのは、パパはもちろん、子どもにもママにも安心につながるでしょう。
わが子と二人っきりで過ごすのではなく、他の子もいる場所に出かけることで、わが子を見る目が変わります。子どもの育ちはそれぞれ違い、焦る必要はないことがわかります。月齢の高い子を見て、こんな風に成長していくのだという目安にもなります。わが子だけと思っていたことが、意外とみんな同じように悩んでいるのだとわかりホッとすることもあるでしょう。
他の子と関わることで、わが子との関わり方が変わることもあります。自分の子だと何かあるとすぐに怒ったり手助けしたくなりますが、よその子だと冷静に「待つ」ことができますよね。親として、耐える力を身につけられるようにもなります。
私は以前、児童養護施設の指導員をしていたこともあり、児童虐待防止の活動もしています。虐待は親子が孤立してしまうこともリスクの一つ。そこで「家に閉じ込めずに地域で子育て」をスローガンに、「みなくるハウス」という交流の場を作りました。
このような子育て施設だけでなく、近所の人との関わりも持てるといいですね。たとえば、自分が病気になった時、第二子の妊娠出産時などに、少しの間でも子どもを預かってくれる人が近所にいると安心です。
ご近所の方に子どもを見ていただいたり、少し子どもが大きくなったら、ママ同士子どもを預けあうことができれば心強いものです。
時には、子ども同士がけんかしたり、ケガをさせたりというトラブルもあるでしょう。
でもそれは親として避けられないこと。「うまくいかないから、もうこのグループと付き合うのはやめよう」ではなく、その時々で、親同士が話し合い、解決していく姿勢が大切です。
「今は赤ちゃんと二人で家の中にいるのが楽しい」という人は無理をしなくても大丈夫。人と出会いたい人が出会えないからつらいのであって、出かけなくてはいけないということではありません。「私がママ友を作らないと、子どもがかわいそう」と思う必要もありません。
小学校に入るまでには、幼稚園や保育所に行って、子どもも親も他の人との関わりが始まるでしょうし、日々の買い物などでも人と交流することができます。無理をせず、それぞれのママが心地よいと思うやり方で子育てをしていきましょう。
イラスト/サカモトアキコ 取材・文/椹寛子